Grunge Albums 163

グランジ関連バンドのアルバムを有名なバンドに偏りすぎないように、
1バンドにつき最大3枚までとしつつ、各アルバムの重要度を考慮しながら、
それぞれの作品ごとに数行程度のコメントをつけながら紹介しています。

これからグランジ系のバンドに手を出してみようというときや、
マイナーなグランジバンドを掘り下げる際などにご利用ください。

紹介作品については今後もときどき追加していく予定としています。

アルバムジャケットからamazonの該当商品のページへ飛べます。
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1.Nirvana - Nevermind

Nirvana - Nevermind Released1991.9.24
Type2nd Studio Album
GenreGrunge, Alternative Rock
ProducerButch Vig
LabelDGC
OriginAberdeen, Washington, U.S.
Certifications
  • US - Diamond (1000万枚以上)
  • CAN - Diamond (100万枚以上)
  • UK - 5x Platinum (150万枚以上)
  • AUS - 5x Platinum (35万枚以上)
  • NZ - 7x Platinum (10万5千枚以上)
  • FRA - Diamond (100万枚以上)
  • ARG - 3x Platinum (18万枚以上)
  • BEL - 3x Platinum (15万枚以上)
  • JPN - 3x Platinum (60万枚以上)
  • GER - 2x Platinum (100万枚以上)
  • SWE - 2x Platinum (20万枚以上)
  • ITA - Platinum (10万枚以上)
  • BRA - Platinum (25万枚以上)
  • SWI - Platinum (5万枚以上)
  • AUT - Platinum (5万枚以上)
  • POL - Platinum (10万枚以上)
  • MEX - 2x Gold (20万枚以上)
  • FIN - Gold (2万5千枚以上)

グランジを聴くうえでは絶対に外せない、90年代におけるグランジムーブメントの火付け役となったアルバム。Wipersの地下臭の香るパンクやPixiesやSonic Youthなどの80年代オルタナティブの感性に、独自の歪んだポップネスを取り込んだサウンドは、"Smells Like Teen Spirit"のシングルヒットを皮切りにそれまで地下音楽だったオルタナティブをメインストリームへ引き上げる原動力となった。アメリカ国内で1000万枚以上のセールスを記録するにとどまらず、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリアなどでも大きくヒットし、様々な地域で高く評価される作品となった。

2.Pearl Jam - Ten

Pearl Jam - Ten Released1991.8.27
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Hard Rock
ProducerRick Parashar
LabelEpic
OriginSeattle, Washington, U.S.
Certifications
  • US - 13x Platinum (1300万枚以上)
  • CAN - 9x Platinum (90万枚以上)
  • AUS - 8x Platinum (56万枚以上)
  • NZ - 6x Platinum (9万枚以上)
  • UK - 3x Platinum (90万枚以上)
  • GER - Platinum (50万枚以上)
  • ITA - Platinum (10万枚以上)
  • SWE - Platinum (10万枚以上)
  • BEL - Platinum (5万枚以上)
  • BRA - Gold (10万枚以上)
  • POL - Gold (5万枚以上)
  • SWI - Gold (2万5千枚以上)

Nirvanaと並ぶグランジムーブメントの立役者となったPearl Jam。土の香りの強いハードロックを基盤に、The Doorsの持つ陰りやNeil Youngの持つ荒涼とした感覚も取り入れたシリアスで骨の太いアメリカンロックを完成させ、アメリカ本国ではNirvanaの"Nevermind"をも凌ぐ1300万枚以上ものセールスを記録した。彼らが打ち立てたスタイルはやがて90年代のアメリカンロックの基本形となり、CreedやNickelbackなどの後のポストグランジ勢へと受け継がれていくなど、彼らの影響下にあるバンドは数えきれないほどに多い。

3.Alice in Chains - Dirt

Alice in Chains - Dirt Released1992.9.29
Type2nd Studio Album
GenreGrunge, Alternative Metal
ProducerDave Jerden, Alice in Chains
LabelColumbia
OriginSeattle, Washington, U.S.
Certifications
  • US - 4x Platinum (400万枚以上)
  • CAN - Platinum (10万枚以上)
  • UK - Gold (10万枚以上)

Black Sabbathのドロドロとしたヘヴィネス、サイケデリックに通じる浮遊感と妖しくも美しいメロディを融合させたそのサウンドは、ドゥームメタル系とはまた違った形でのダウナーでメタリックなヘヴィロックの在り方を提示した。90年代中期以降のヘヴィロック勢はそのほとんどが彼らのフォロワーと言えるほどで、後続に与えた影響の大きさは計り知れない。シアトル4大バンド(Nirvana, Pearl Jam, Alice in Chains, Soundgarden)の中では最もメタリックなバンドではあるが、通常のメタルとは明らかに異質な感覚を持っていることをこのアルバムはあまりに雄弁に語ってくれる。

4.Soundgarden - Superunknown

Soundgarden - Superunknown Released1994.2.18
Type4th Studio Album
GenreGrunge, Alternative Metal
ProducerMichael Beinhorn, Soundgarden
LabelA&M
OriginSeattle, Washington, U.S.
Certifications
  • US - 5x Platinum (500万枚以上)
  • CAN - 3x Platinum (30万枚以上)
  • AUS - 3x Platinum (21万枚以上)
  • SWE - 2x Platinum (20万枚以上)
  • UK - Gold (10万枚以上)

Led ZeppelinとBlack Sabbath色の強いグランジとして語られがちな彼らだが、本作ではそのヘヴィネスと彼らの重要なルーツであるポストパンクやサイケデリックの要素を融合させ、実にバラエティ豊かなサウンドを構築している。ダークな質感を持ったアルバムであることは間違いないが、典型的なグランジ的な暗さではなく、"Fell on Black Days"で見られるようなポストパンク的な薄ら寒い感覚や"Black Hole Sun"で見られるサイケデリック的な粘り気のあるダウナー感覚こそがこのアルバムの最大の醍醐味となっている。本作は彼らにとっての最大の代表作ともなり、アメリカ国内だけで500万枚以上のセールスを記録した。

5.Stone Temple Pilots - Core

Stone Temple Pilots - Core Released1992.9.29
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Alternative Metal
ProducerBrendan O'Brien
LabelAtlantic
OriginSan Diego, California, U.S.
Certifications
  • US - 8x Platinum (800万枚以上)
  • CAN - 2x Platinum (20万枚以上)
  • AUS - Platinum (7万枚以上)
  • NZ - Gold (7500枚以上)
  • UK - Silver (6万枚以上)

Led Zeppelinの硬質なサウンドとThe Doorsのサイケデリックな酩酊感を合わせてひたすら煮詰めたかのような、土の香りを漂わせながらも大地が焼け付くのようなヘヴィでサイケデリックな浮遊感に満ちたサウンドが全編を支配している。まさに当時の様々なグランジの個性を凝縮したようなサウンドは多くの支持を受け、アメリカ国内だけでPearl JamとNirvanaに次ぐ800万枚のセールスを記録した。便乗バンドと思われがちな彼らだが、本作の収録曲の多くはグランジムーブメント以前の90年に作られたデモテープにも収録されていた。次作以降は持ち前の音楽性の広さをもとに徐々にそのバラエティを広げていくことになる。

6.The Smashing Pumpkins - Mellon Collie and the Infinite Sadness

The Smashing Pumpkins - Mellon Collie and the Infinite Sadness Released1995.10.23
Type3rd Studio Album
GenreAlternative Rock, Grunge
ProducerAlan Moulder, Billy Corgan, Flood
LabelVirgin
OriginChicago, Illinois, U.S.
Certifications
  • US - Diamond (500万組以上)
  • CAN - Diamond (100万組以上)
  • AUS - 4x Platinum (28万組以上)
  • NZ - Platinum (1万5千組以上)
  • UK - Platinum (30万組以上)
  • IRL - 2x Platinum (3万組以上)
  • PRT - 2x Platinum (8万組以上)
  • FRA - Platinum (30万組以上)
  • BEL - Platinum (5万組以上)
  • ITA - Gold (5万組以上)
  • NLD - Gold (5万組以上)
  • NOR - Gold (2万5千組以上)
  • ESP - Gold (5万組以上)
  • SWE - Gold (5万組以上)
  • GER - Gold (25万組以上)

ヘヴィメタル的な轟音とシューゲイザーやドリームポップ的な世界観を折り重ね、極端なまでに静と動の対比を独特の美意識のもとに描き出していく。静けさと狂気のせめぎ合いを1日の時間の流れとともに描写し、最後は次の日にもまた同じことがくり返されることを示唆して幕を降ろしていく。LP版の曲順にしたがって聴くと、場面ごとの感情の変化がより露わとなり、時を追うごとに絶望と希望が交差していく様を深く見ることができる。2枚組であるために一定の散漫さもあるものの、間違いなく彼らの代表作であり、アメリカ国内だけで500万組以上のセールスを記録した。

7.Mudhoney - Superfuzz Bigmuff Plus Early Singles

Mudhoney - Superfuzz Bigmuff Plus Early Singles Released1990.10.25
TypeCompilation Album
GenreGrunge
ProducerJack Endino
LabelSub Pop
OriginSeattle, Washington, U.S.

グランジの元祖と言われるバンドであるGreen Riverにいたマーク・アームとスティーブ・ターナーらによって結成された、ガレージ/パンク系のグランジを最も代表するバンド。The Stoogesのストレートな攻撃性にBlue Cheerにも通じるヘロヘロとした酩酊感を合わせたサウンドは、アンダーグラウンドだった頃のグランジが今にも地上に噴き出そうとしている強烈な勢いを感じさせる。この時期の強い酩酊感は後のFu ManchuやNebulaなどのStoner/Desert Rock勢にも通じるものがあった。

8.Green River - Dry as a Bone/Rehab Doll

Green River - Dry as a Bone/Rehab Doll Released1990.9.13
TypeCompilation Album
GenreGrunge
ProducerBruce Calder, Jack Endino
LabelSub Pop
OriginSeattle, Washington, U.S.

Black Flagが"My War"アルバムで提示した遅いハードコアとハードロックを融合させ、グランジと呼ばれるサウンドの基本形を作り出したグランジの元祖とも呼びうるバンド。黎明期のシアトルのグランジシーンのサウンドを知るという点からすれば、これを凌ぐ作品は他にないと言っても過言ではないほど。バンドの解散後、ストーン・ゴッサードとジェフ・アメンはMother Love Boneを経過してPearl Jamへ、マーク・アームはスティーブ・ターナーとともにMudhoneyを結成することになる。

9.Nirvana - In Utero

Nirvana - In Utero Released1993.9.21
Type3rd Studio Album
GenreGrunge, Alternative Rock
ProducerSteve Albini, Scott Litt
LabelDGC
OriginAberdeen, Washington, U.S.
Certifications
  • US - 5x Platinum (500万枚以上)
  • CAN - 6x Platinum (60万枚以上)
  • AUS - 2x Platinum (14万枚以上)
  • NZ - 3x Platinum (4万5千枚以上)
  • UK - 2x Platinum (60万枚以上)
  • FRA - Platinum (30万枚以上)
  • ESP - Platinum (10万枚以上)
  • JPN - Platinum (20万枚以上)
  • ARG - Platinum (6万枚以上)
  • GER - Gold (25万枚以上)
  • ITA - Gold (5万枚以上)
  • AUT - Gold (2万5千枚以上)
  • POL - Gold (5万枚以上)
  • SWE - Gold (5万枚以上)
  • BRA - Gold (10万枚以上)

前作の"Nevermind"がオルタナティブな要素を多く取り込みながらも、一定のポップネスも内包していたことから、本作では逆にわかりやすく作るという意識を徹底して排除し、プロデューサーにスティーブ・アルビニを起用してザラザラとした剥き出しの感情をそのまま注ぎ込むという手法で制作された。メロディセンスの高さなどは"Nevermind"を継承しながらも、怒りや絶望といったネガティブな感情を爆発させ、生々しい混乱や混沌をダイレクトに落とし込むことで、グランジ全体を眺めても他に類を見ないほどの強い攻撃性と切迫感を宿した作品となった。"Nevermind"には及ばなかったものの、アメリカ国内だけで500万枚以上のセールスを記録した。

10.Pearl Jam - Vitalogy

Pearl Jam - Vitalogy Released1994.11.22
Type3rd Studio Album
GenreGrunge, Alternative Rock
ProducerBrendan O'Brien, Pearl Jam
LabelEpic
OriginSeattle, Washington, U.S.
Certifications
  • US - 5x Platinum (500万枚以上)
  • CAN - 6x Platinum (60万枚以上)
  • AUS - 5x Platinum (35万枚以上)
  • UK - Platinum (30万枚以上)
  • POL - Gold (5万枚以上)

2ndの"Vs."までは王道ハードロックとしての色合いも強かったが、本作ではライバルでもあり盟友でもあったNirvanaのカート・コバーンの死を受け、さらに時代のイコンとしての運命を背負わされたエディ・ヴェダーの苦悩がダイレクトに叩きつけられた作風となった。これまでと比べて実験的な曲が多く増え、ヘヴィな曲においてもゴリゴリとした質感やそこに宿る混沌や攻撃性が著しく強まることとなった。抑えきれない感情が放射された作品としてはNirvanaの"In Utero"と対をなすほどの存在と言えるだろう。また、"Ten"や"Vs."のサウンドに上手くなじめなかった場合には、混乱に満ちたこちらの作品のほうが逆に入りやすいこともあるだろう。大きな作風の変化があったにもかかわらず、アメリカ国内で500万枚以上のセールスを記録した。

11.Temple of the Dog - Temple of the Dog

Temple of the Dog - Temple of the Dog Released1991.4.16
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Hard Rock
ProducerRick Parashar, Temple of the Dog
LabelA&M
OriginSeattle, Washington, U.S.
Certifications
  • US - Platinum (100万枚以上)
  • CAN - Platinum (10万枚以上)

Mother Love Boneのアンドリュー・ウッドの死後、彼のルームメイトだったSoundgardenのクリス・コーネルの呼びかけで、SoundgardenとMother Love Boneのメンバーらで結成されたアンドリューの追悼プロジェクト。その渋みのあるストレートなブルーズロックは、オルタナティブな感性を強く宿した他のグランジ系とはまた違った旨味があり、後に結成されたPearl Jamの源流も感じさせる。Pearl Jamがブレイクしたことでこの作品への注目も高まり、アメリカ国内で100万枚以上のセールスを記録した。

12.Bush - Sixteen Stone

Bush - Sixteen Stone Released1994.12.6
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Post-Grunge (1st wave)
ProducerClive Langer, Alan Winstanley, Bush
LabelInterscope
OriginLondon, England, U.K.
Certifications
  • US - 6x Platinum (600万枚以上)
  • CAN - 6x Platinum (60万枚以上)
  • AUS - 2x Platinum (14万枚以上)
  • NZ - 2x Platinum (3万枚以上)
  • UK - Silver (6万枚以上)

イギリス出身のグランジバンド。Nirvanaからの影響が強すぎることなどが原因で批判も受けたが、グランジ後続世代では最も成功したバンドとなった。良くも悪くもグランジの特性を上手く引き出したサウンドで、「グランジってどんな音楽なの?」という問いに対する最もわかりやすい回答とも呼べる作風となっている。本国イギリスではあまり注目されなかった一方で、アメリカでは"Everything Zen"をはじめ本作からリリースした5曲のシングルが全て大きくヒットし、アルバムもアメリカ国内だけで600万枚以上のセールスを記録した。

13.Soundgarden - Badmotorfinger

Soundgarden - Badmotorfinger Released1991.10.8
Type3rd Studio Album
GenreGrunge, Alternative Metal
ProducerTerry Date, Soundgarden
LabelA&M
OriginSeattle, Washington, U.S.
Certifications
  • US - 2x Platinum (200万枚以上)
  • CAN - Platinum (10万枚以上)
  • AUS - Gold (3万5千枚以上)
  • UK - Silver (6万枚以上)

次作の"Superunknown"を彼らがルーツとしてきた全ての音楽性の集大成だとするなら、こちらはLed Zeppelin/Black Sabbathをはじめとした70年代ハードロックを受け継ぐバンドとしての最高傑作と言えるだろう。グランジ的なグルーヴ、うねりの最高峰とも呼べるサウンドをはじめ、Killing JokeをZEP/Sabbath的側面から調理したかのような"Jesus Christ Pose"など、70年代的でありながらも既存の枠には収まりきらない、ヘヴィなハードロックの新たなあり方を提示した作品でもあった。アメリカ国内だけで200万枚以上のセールスを記録。

14.Alice in Chains - Jar of Flies

Alice in Chains - Jar of Flies Released1994.1.25
Type3rd EP
GenreGrunge, Alternative Rock
ProducerAlice in Chains
LabelColumbia
OriginSeattle, Washington, U.S.
Certifications
  • US - 3x Platinum (300万枚以上)
  • CAN - 2x Platinum (20万枚以上)
  • UK - Silver (6万枚以上)

2ndEPの"SAP"に続き、アンプラグド的なスタイルで仕上げられたアルバム。Black Sabbath的な粘り気とヘヴィネスと攻撃性をとにかく前面に出したのが"Dirt"とするなら、こちらはAlice in Chainsのもう一つの大きな魅力である妖しげな美しさを際立たせた作品と言っていいだろう。絶望的な酩酊感に満ちていながら逃れる術のない美しさに取り込まれて溶かされていく。そんなAIC流のサイケデリアの究極系と呼んでもいいだろう。単なるサバス直系のヘヴィロックバンドではない、彼らの懐の広さを見せ付けてくれる作品でもある。収録曲が7曲のみのEPでありながら、アメリカ国内だけで300万枚を超えるセールスを記録した。

15.Mother Love Bone - Stardog Champion

Mother Love Bone - Stardog Champion Released1992.9.22
TypeCompilation Album
GenreGrunge, Hard Rock, Funk Metal
ProducerBruce Calder, Terry Date, Mark Dearnley, MLB
LabelStardog/Mercury
OriginSeattle, Washington, U.S.

元Green Riverのストーン・ゴッサードとジェフ・アメンが元Malfunkshunのアンドリュー・ウッドと結成したバンド。Pearl Jamを少し大人しくして、アンドリューが持ち込んだグラムロック的な要素に加え、The Doorsの陰りとファンクネスをまぶしたようなひねりの効いたハードロックを鳴らす。Living Colourなどの80年代後期のファンクメタルとグランジ的な暗さをミックスしたようなサウンドと呼ぶこともできるだろう。アンドリュー・ウッドの死後、ストーンとジェフがエディ・ヴェダーらを迎えてPearl Jamを結成したことでも知られている。

16.Live - Throwing Copper

Live - Throwing Copper Released1994.4.26
Type2nd Studio Album
GenreAlternative Rock, Post-Grunge (1st wave)
ProducerJerry Harrison, Live
LabelRadioactive
OriginYork, Pennsylvania, U.S.
Certifications
  • US - 8x Platinum (800万枚以上)
  • CAN - 7x Platinum (70万枚以上)
  • AUS - 8x Platinum (56万枚以上)
  • NZ - 6x Platinum (9万枚以上)
  • UK - Gold (10万枚以上)
  • NDL - Platinum (4万枚以上)
  • SWE - Gold (5万枚以上)

1stアルバムではR.E.M.がファンクに傾倒したようなサウンドを鳴らしていたが、このアルバムではR.E.M.やU2などのカレッジロック的な感性をベースに、初期のPearl Jamのような激性を流し込むことで独自のサウンドを完成させた。グランジそのものにカテゴライズされることは少ないが、共通性も非常に多くあるため、グランジについて掘り下げるなら絶対に手にしておいてほしい作品。アメリカ国内だけで800万枚を超える極めて高いセールスも記録するなど、90年代中期のオルタナティブロックを代表する作品となった。

17.Melvins - Houdini

Melvins - Houdini Released1993.9.21
Type5th Studio Album
GenreSludge Metal, Grunge
ProducerMelvins, Kurt Cobain, GGGarth
LabelAtlantic
OriginMontesano, Washington, U.S.

Black Flagの遅いハードコアパンクとSwansのダークでノイジーなヘヴィネスを受け継ぎ、グランジのみならずスラッジメタルの基礎を作り上げたMelvins。彼らの生み出すサウンドはグランジほどわかりやすくはないが、80年代中期にシアトル界隈においてグランジが成立するうえで極めて重要な役割を果たしたことは間違いない。このアルバムは彼らの作品の中では比較的聴きやすく、ボディブローのように攻め立ててくるヘヴィネスを堪能することができる。また、Nirvanaのカート・コバーンもプロデュースに関わっている。

18.Blind Melon - Blind Melon

Blind Melon - Blind Melon Released1992.9.22
Type1st Studio Album
GenreAlternative Rock, Grunge, Psychedelic Rock
ProducerRick Parashar, Blind Melon
LabelCapitol
OriginLos Angeles, California, U.S.
Certifications
  • US - 4x Platinum (400万枚以上)
  • CAN - 4x Platinum (40万枚以上)
  • UK - Gold (10万枚以上)

Grateful Deadやサザンロックのゆったりとした大らかなムードにファンクのグルーヴとLed Zeppelin的な硬質さを合わせ、そこに深い陰を感じさせるメロディを重ねていく。この温かさと寂し気な感覚の同居が彼らの大きな魅力でもあった。多くのグランジバンドとは異なったルーツを持っているにもかかわらず、不思議とグランジにカテゴライズされることが多かった。ハチに扮した少女が登場するMVでも有名な"No Rain"がシングルとしてヒットし、アルバムもアメリカ国内だけで400万枚以上のセールスを記録した。

19.Dinosaur Jr. - Where You Been

Dinosaur Jr. - Where You Been Released1993.2.9
Type5th Studio Album
GenreAlternative Rock, Grunge
ProducerJ Mascis
LabelBlanco y Negro/Sire
OriginAmherst, Massachusetts, U.S.

ニール・ヤングとパンクが出会ったようなサウンドを基盤に、ノイジーな轟音と胸を締め付けるようなメロディが同居したサウンドを鳴らすバンドの5th。初期の頃に比べるとその攻撃性はやや抑えめになってはいるが、その分だけ独特のヘロヘロとしながらもメロディアスなヴォーカルの比重は高まっている。グランジというよりは、グランジに強い影響を与えたという位置付けのバンドで、その暗さもドロドロとした感覚は薄く、寂し気な陰りといった印象が強い。アルバムからは"Start Choppin'"がヒットし、アルバムもアメリカ国内で25万枚以上のセールスを記録した。

20.Nirvana - MTV Unplugged in New York

Nirvana - MTV Unplugged in New York Released1994.11.1
TypeLive Album
GenreGrunge, Alternative Rock, Acoustic Rock
ProducerAlex Coletti, Scott Litt, Nirvana
LabelDGC
OriginAberdeen, Washington, U.S.
Certifications
  • US - 5x Platinum (500万枚以上)
  • CAN - 9x Platinum (90万枚以上)
  • AUS - 5x Platinum (35万枚以上)
  • NZ - Platinum (1万5千枚以上)
  • UK - 2x Platinum (60万枚以上)
  • BEL - 3x Platinum (15万枚以上)
  • ARG - 3x Platinum (18万枚以上)
  • FRA - 2x Platinum (60万枚以上)
  • AUT - 2x Platinum (10万枚以上)
  • ESP - 2x Platinum (20万枚以上)
  • SWI - 2x Platinum (10万枚以上)
  • POL - Platinum (10万枚以上)
  • SWE - Platinum (10万枚以上)
  • JPN - Platinum (20万枚以上)
  • BRA - Platinum (25万枚以上)
  • ITA - Gold (5万枚以上)

NirvanaがMTVの「アンプラグド」に出演した際に演奏した音源を収録したアルバム。全編アコースティックで演奏されていることもあり、前作の"In Utero"の徹底した攻撃性の放射とは全く正反対の、Nirvanaがもともと持っていたR.E.M.的な側面やメロディの組み立ての上手さなどが際立った作風となっている。いわゆるグランジ的な重さは皆無な作品だが、Alice in Chainsの"Jar of Flies"やPearl Jamの"No Code"などと並び、グランジの「静」の部分を映し出した作品と言うことができよう。こちらも"In Utero"と同じく、アメリカ国内だけで500万枚以上のセールスを記録した。

21.Pearl Jam - Vs.

Pearl Jam - Vs. Released1993.10.19
Type2nd Studio Album
GenreGrunge, Hard Rock
ProducerBrendan O'Brien, Pearl Jam
LabelEpic
OriginSeattle, Washington, U.S.
Certifications
  • US - 7x Platinum (700万枚以上)
  • CAN - 5x Platinum (50万枚以上)
  • AUS - 4x Platinum (28万枚以上)
  • UK - Platinum (30万枚以上)

1stアルバムの"Ten"の路線をおおむね受け継ぎつつ、湿り気を帯びていたサウンドプロダクションが排除され、よりカラッとしたアメリカンロックを思わせるサウンドとなった。しかし、それと同時にパンキッシュで直線的な攻撃性も高められている。"Ten"で提示された家族間の関係から生まれる葛藤や絶望というテーマは今作でも踏襲され、児童虐待を扱った"Daughter"など重々しい曲が並んでいる。一方で、自身の父親に対する葛藤にピリオドを打つために書かれた"Rearviewmirror"でそうしたテーマには一定の区切りが打たれ、次作の"Vitalogy"以降はもっとパーソナルな視点に基づく曲が増えていくこととなった。アメリカ国内だけで700万枚以上のセールスを記録。

22.The Smashing Pumpkins - Siamese Dream

The Smashing Pumpkins - Siamese Dream Released1993.7.27
Type2nd Studio Album
GenreAlternative Rock, Grunge
ProducerButch Vig, Billy Corgan
LabelVirgin
OriginChicago, Illinois, U.S.
Certifications
  • US - 4x Platinum (400万枚以上)
  • CAN - 4x Platinum (40万枚以上)
  • AUS - Platinum (7万枚以上)
  • NZ - Platinum (1万5千枚以上)
  • UK - Gold (10万枚以上)
  • SWE - Gold (5万枚以上)

彼らの最大の代表作である「メロンコリー」では、曲ごとに静と動を極端に切り分けた作風をあえて取っていたのに対し、こちらの作品ではそれぞれの曲の中で整合性を持たせながら静と動の対比を描き出している。それゆえに1曲ごとのまとまりが非常に良く、こちらを「メロンコリー」以上の代表作として挙げる人も多い。いかにもグランジ的な作風の曲はやや少なくはあるが、The Smashing Pumpkinsを初めて聴くにあたってはこの作品が最もとっつきやすいとも言えるだろう。アメリカ国内だけで400万枚以上と、「メロンコリー」と比べてもそれほど遜色のないセールスを記録した。

23.Candlebox - Candlebox

Candlebox - Candlebox Released1993.7.20
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Post-Grunge (1st wave)
ProducerKelly Gray, Candlebox
LabelMaverick/Warner Bros.
OriginSeattle, Washington, U.S.
Certifications
  • US - 4x Platinum (400万枚以上)

ストレートな70年代ハードロックとブルーズロックを基盤に90年代的なうねりを取り入れたサウンドを鳴らすシアトルのバンド。初期のPearl Jamに近くもあるが、それよりももっと素直なブルーズ・ハードロックらしさを持っているのが特徴。日本では知名度があまり高くないが、このアルバムからのシングルである"Far Behind"や"You"のヒットも手伝ってアメリカ国内だけで400万枚以上のセールスを記録するなど、この時代のシアトル出身バンドの中でも特に大きな成功を収めたバンドの一つであった。2ndの"Lucy"ではよりザラついたグランジにブルーズをミックスした独自性の高いサウンドを提示した。

24.Stone Temple Pilots - Purple

Stone Temple Pilots - Purple Released1994.6.7
Type2nd Studio Album
GenreGrunge, Alternative Rock
ProducerBrendan O'Brien
LabelAtlantic
OriginSan Diego, California, U.S.
Certifications
  • US - 6x Platinum (600万枚以上)
  • CAN - 3x Platinum (30万枚以上)
  • AUS - Platinum (7万枚以上)
  • NZ - Platinum (1万5千枚以上)
  • UK - Silver (6万枚以上)

基本的には1stアルバムの"Core"の延長線上にある、ヘヴィで酩酊感の強いダークなサウンドでありながらも、このバンドのもう一つの持ち味である様々な音楽性の融合が試みられている。彼らが得意とするジャズの要素が取り入れられたり、ヘヴィでありながらもよりメロディアスな曲が増えるなど、前作と比べてよりバラエティに富んだ作風となっている。"Vasoline"や"Interstate Love Song"などのシングルが大きくヒットし、アルバムもアメリカ国内だけで600万枚以上のセールスを記録するなど、前作に次いで大きな成功を収めた作品となった。

25.Hole - Live Through This

Hole - Live Through This Released1994.4.12
Type2nd Studio Album
GenreGrunge
ProducerPaul Q. Kolderie, Sean Slade
LabelDGC
OriginLos Angeles, California, U.S.
Certifications
  • US - Platinum (100万枚以上)
  • CAN - Platinum (10万枚以上)
  • AUS - Platinum (7万枚以上)
  • UK - Gold (10万枚以上)

Nirvanaのカート・コバーンの妻のコートニー・ラヴがヴォーカルを務めていたバンドの2nd。1stの"Pretty on the Inside"ほどノイジーでザラついた攻撃性一辺倒でもなく、3rdの"Celebrity Skin"ほどポップじゃない、グランジらしい激性とポップネスを上手く組み合わせたNirvanaとの共通性も深く感じさせる仕上がりとなっている。このアルバムから"Doll Parts"や"Miss Wolrd"などのシングルがヒットし、アルバムもアメリカ国内だけで100万枚以上のセールスを記録した。

26.Screaming Trees - Dust

Screaming Trees - Dust Released1996.6.25
Type7th Studio Album
GenreGrunge, Neo-Psychedelia
ProducerGeorge Drakoulias
LabelEpic
OriginEllensburg, Washington, U.S.

グランジの黎明期である80年代中期から活動するサイケデリック色の強いシアトルのグランジバンドの7th。これまでの作品で培ってきた粘り気のあるサイケサウンドを基盤にフォークなどの要素も合わせた、彼らの音楽性の集大成とも呼びうる作品。いわゆるグランジのイメージとは少し違うが、90年代におけるThe Doorsの正統継承者と呼びたくなる深みのあるサウンドは聴き逃すにはあまりにもったいない。アルバムからはシングル"All I Know"がヒットし、"Kerrang!"誌において1996年のベストアルバムにも選出された。

27.Alice in Chains - Alice in Chains

Alice in Chains - Alice in Chains Released1995.11.7
Type3rd Studio Album
GenreGrunge, Alternative Metal
ProducerToby Wright, Alice in Chains
LabelColumbia
OriginSeattle, Washington, U.S.
Certifications
  • US - 2x Platinum (200万枚以上)
  • CAN - 2x Platinum (20万枚以上)

彼らの代表作となった2ndの"Dirt"では、錆び付いた鉄に覆われて荒廃した大地を思わせるような粘り気の強いドロドロとしたヘヴィネスを完成させて見せたが、こちらのアルバムではそうしたサウンドとしてのヘヴィネスではなく、グランジというものが内包している気味の悪い感覚、救いのないところへ落ちたままにそこを漂う様、腐ったままに崩れ落ちそうになっていく姿、そうした生命の負の部分をそのまま映し出したかのような世界が最初から最後まで展開されていく。幾多のグランジアルバムの中でも最も不気味な作風と言っても良く、グランジの世界観を最も極端な形で映し出すことに成功した作品とも言えるだろう。

28.Silverchair - Frogstomp

Silverchair - Frogstomp Released1995.3.27
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Post-Grunge (1st wave)
ProducerKevin "Caveman" Shirley
LabelMurmur, Epic
OriginNewcastle, New South Wales, Australia
Certifications
  • US - 2x Platinum (200万枚以上)
  • CAN - 3x Platinum (30万枚以上)
  • AUS - 4x Platinum (28万枚以上)
  • UK - Silver (6万枚以上)

活動開始当初は中学生だったオーストラリアのグランジバンドの1st。Alice in ChainsやPearl Jamなどの主要なグランジバンドやMetallicaのブラックアルバムの影響が如実に感じられるサウンドは、当時のグランジムーブメントの勢いも手伝って本国オーストラリアで4回のプラチナムとアメリカでの200万枚以上のセールスを記録した。本作ではまだ多分に青さも見られるが、当時の時代の勢いに触れるうえでは欠かせないアルバムの一つと言えるだろう。

29.The Presidents of the United States of America - The Presidents of the United States of America

The Presidents of the United States of America - The Presidents of the United States of America Released1995.7.25
Type1st Studio Album
GenreAlternative Rock, Post-Grunge (1st wave), Grunge
ProducerPUSA, Conrad Uno
LabelColumbia
OriginSeattle, Washington, U.S.
Certifications
  • US - 3x Platinum (300万枚以上)
  • CAN - 4x Platinum (40万枚以上)
  • AUS - 4x Platinum (28万枚以上)
  • NZ - Platinum (1万5千枚以上)
  • UK - Gold (10万枚以上)

ダークな雰囲気を持っていることが多いシアトルのグランジ勢の中では極めて珍しいコメディ路線のバンド。弦が3本のギタベースと弦が2本のベーシターという独自の楽器を駆使する。アルバムはいきなり猫の鳴き真似から始まり、「田舎に引っ越して桃をいっぱい食べるんだ」といったおふざけ感覚満載の歌詞と少しグランジっぽいスカスカサウンドに満たされ、これが意外とやみつきになる。その桃について歌ったシングル"Peaches"や"Lump"がヒットし、アルバムもアメリカ国内だけで300万枚以上のセールスを記録した。

30.Everclear - Sparkle and Fade

Everclear - Sparkle and Fade Released1995.5.23
Type2nd Studio Album
GenrePost-Grunge (1st wave), Grunge
ProducerArt Alexakis
LabelCapitol
OriginPortland, Oregon, U.S.
Certifications
  • US - Platinum (100万枚以上)
  • CAN - Platinum (10万枚以上)
  • AUS - Platinum (7万枚以上)

それほどダークではないがねじれていて、かつパンキッシュでザラザラとしたサウンドを鳴らすバンドの2nd。前作ではNirvanaにも通じるもっとノイジーでパンキッシュなグランジだったが、本作ではザラつきつつも全編を冷めた感覚が支配している。本作からは自分自身の自殺未遂について書いた"Santa Monica"がヒットし、アルバムもアメリカ国内だけで100万枚以上のセールスを記録した。より攻撃的なグランジサウンドを求めるなら1stアルバムの"World of Noise"も強くオススメしておきたい。

31.Foo Fighters - Foo Fighters

Foo Fighters - Foo Fighters Released1995.7.4
Type1st Studio Album
GenrePost-Grunge (1st wave), Grunge, Alternative Rock
ProducerBarrett Jones, Dave Grohl
LabelCapitol, Roswell
OriginSeattle, Washington, U.S.
Certifications
  • US - Platinum (100万枚以上)
  • CAN - Platinum (10万枚以上)
  • AUS - Gold (3万5千枚以上)
  • UK - Gold (10万枚以上)

Nirvanaのドラマーだったデイヴ・グロールがカート・コバーンの死後に新たに立ち上げたバンドの1st。2nd以降も幅広い活躍を続け、アルバムもよりバラエティに富んだ作風となっていくが、本作ではNirvana時代からの流れを一定程度汲みつつ、ほどよくメロディアスで少し地味ながらも原初的なグランジにも通じる芯の通ったサウンドを聴かせる。この作品からのシングル"Big Me"、"This Is a Call"、"I'll Stick Around"がどれもヒットし、アルバムもアメリカ国内だけで100万枚以上のセールスを記録した。

32.Toadies - Rubberneck

Toadies - Rubberneck Released1994.8.23
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Post-Grunge (1st wave)
ProducerTom Rothrock, Rob Schnapf
LabelInterscope
OriginFort Worth, Texas, U.S.
Certifications
  • US - Platinum (100万枚以上)

テキサス州出身のグランジバンドの1st。Pixiesをより激しくしたようなスタイルを基盤にZZ Topなどの南部らしい泥臭さを取り込んだサウンドを鳴らす。聴きやすさと激しさ、そしてひねくれた感覚が上手く同居している。日本での知名度は低いが決してあなどれないバンド。ポッサム・キングダム湖にまつわるストーカー殺人の伝説を描いた"Possum Kingdom"がヒットし、アルバムもアメリカ国内だけで100万枚以上のセールスを記録した。特にこの"Possum Kingdom"の曲が進むごとに徐々に高まる不気味さは必聴と言えるだろう。

33.Our Lady Peace - Naveed

Our Lady Peace - Naveed Released1994.3.22
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Post-Grunge (1st wave)
ProducerArnold Lanni
LabelSony, Epic
OriginToronto, Ontario, Canada
Certifications
  • CAN - 4x Platinum (40万枚以上)

血生臭かった頃の初期のU2がグランジ化したようなサウンドを鳴らすカナダのグランジ/ポストグランジバンドの1st。ひび割れた大地を思い起こさせるほどの乾いた感覚とひどく寂しげな雰囲気がアルバム全体を覆っている。2ndの"Clumsy"では少し聴きやすさが増したものの、基本的にはこの作品の路線が踏襲されているため、ぜひともこの2枚を合わせて手に取ってほしい。1stはカナダで4回のプラチナム、2ndはシングル"Clumsy"や"Superman's Dead"のアメリカ・カナダでのヒットも手伝ってカナダで10回のプラチナム、さらにアメリカでも100万枚を超えるセールスを記録した。

34.The Breeders - Last Splash

The Breeders - Last Splash Released1993.8.8
Type2nd Studio Album
GenreAlternative Rock
ProducerKim Deal, Mark Freegard
Label4AD
OriginBoston, Massachusetts, U.S.
Certifications
  • US - Platinum (100万枚以上)
  • CAN - Gold (5万枚以上)
  • AUS - Gold (3万5千枚以上)
  • UK - Silver (6万枚以上)

Pixiesのメンバーでもあったキム・ディールが双子の姉妹であるケリー・ディールとともに結成したバンドの2ndアルバム。厳密にはグランジではないものの、The Raincoatsなどのポストパンクからの流れを汲んだ実験性とPixiesとも共通するひねくれたポップセンスが絶妙に絡む様はグランジに通じるものも多く持っている。本作からは"Cannonball"や"Saints"などのシングルがヒットし、アルバムもアメリカ国内だけで100万枚以上のセールスを記録した。

35.Veruca Salt - American Thighs

Veruca Salt - American Thighs Released1994.9.27
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Post-Grunge (1st wave)
ProducerBrad Wood
LabelMinty Fresh/DGC
OriginChicago, Illinois, U.S.
Certifications
  • US - Gold (50万枚以上)

The Breedersのねじれた感覚を強く受け継ぎながら、そこにキュートなポップネスを溶け込ませたバンドの1st。他の女性ヴォーカルのグランジ系バンドと違い、直線的な攻撃性はあまり強くないものの、グランジ的なダークでだらけたムードがほどよく取り入れられている。ニーナ・ゴードンとルイーズ・ポストのツインヴォーカルもこのバンドの大きな魅力となっている。本作からシングルリリースした"Seether"がヒットし、それにともなってアルバムもアメリカ国内だけで50万枚以上のセールスを記録した。

36.Mad Season - Above

Mad Season - Above Released1995.3.14
Type1st Studio Album
GenreGrunge
ProducerBrett Eliason, Mad Season
LabelColumbia
OriginSeattle, Washington, U.S.
Certifications
  • US - Gold (50万枚以上)

Alice in Chainsのレイン・ステイリー(Vo.)とPearl Jamのマイク・マクレディ(Lead G.)を中心に組まれたサイドプロジェクト。Led Zeppelinなどの70年代ハードロックやサイケデリックロックなどを基盤にした、ひたすら渋くブルージーでしっとりとしたロックを鳴らす。Temple of the Dogなどと比べてもさらに渋いスタイルだが、シングルヒットした"River of Deceit"をはじめとして深みのある曲が詰まっている。アメリカ国内だけで50万枚以上のセールスを記録。

37.The Lemonheads - It's a Shame About Ray

The Lemonheads - It's a Shame About Ray Released1992.6.2
Type5th Studio Album
GenreAlternative Rock
ProducerThe Robb Brothers
LabelAtlantic
OriginBoston, Massachusetts, U.S.
Certifications
  • US - Gold (50万枚以上)
  • AUS - Gold (3万5千枚以上)
  • UK - Gold (10万枚以上)

初期の作品ではThe ReplacementsやHusker Duの影響を強く受けたメロディアスながらも鋭さを持ったパンクを鳴らしていたが、このアルバム以降はそうした攻撃性は大きく弱まり、聴きやすいフォークロックのような質感が強まっていった。音楽的にはそれほどグランジと近いわけではないが、グランジとして語られることが少なくない。このアルバムからはシングル"Mrs. Robinson"(Simon & Garfunkelのカバー)などがヒットし、アメリカ国内だけで50万枚以上のセールスを記録した。

38.L7 - Bricks Are Heavy

L7 - Bricks Are Heavy Released1992.4.14
Type3rd Studio Album
GenreGrunge, Alternative Metal
ProducerL7, Butch Vig
LabelSlash
OriginLos Angeles, California, U.S.

HoleやBabes in Toylandと並ぶ女性グランジを代表するバンドの3rdアルバム。ハードロックを基盤にパンクの性急さを強く取り入れ、さらにMudhoneyにも通じるヘロヘロ感も見せる。この作品あたりからパンキッシュな勢いが少し弱まるかわりに、"Monster"などの曲でAlice in Chainsにも通じるBlack Sabbath色の強いヘヴィなサウンドにより接近していった。彼女たちの最大の代表曲として知られる"Pretend We're Dead"が収録されている。

39.Creed - My Own Prison

Creed - My Own Prison Released1997.6.24
Type1st Studio Album
GenrePost-Grunge
ProducerJohn Kurzweg
LabelWind-up
OriginTallahassee, Florida, U.S.
Certifications
  • US - 6x Platinum (600万枚以上)
  • CAN - 3x Platinum (30万枚以上)
  • NZ - 3x Platinum (4万5千枚以上)

グランジを通過したアメリカンロックとしての90年代中期以降のポストグランジを代表するバンドの1stアルバム。グランジそのものにカテゴライズされることはほとんどないが、本作のスタイルはグランジ直系と呼びうるもので、初期のPearl Jamをやや大人しくさせながらAlice in Chainsを彷彿とさせるダークネスを注ぎ込んだようなサウンドが聴ける。次作の"Human Clay"に比べるとそのサウンドには粗さが見られるが、アメリカ国内だけで600万枚以上と非常に大きなセールスを記録した。90年代中期以降にどのようにしてグランジからポストグランジへの移行が見られたのかを見るうえでも重要な作品と言えよう。

40.Sponge - Rotting Pinata

Sponge - Rotting Pinata Released1994.8.2
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Post-Grunge (1st wave)
ProducerSponge, Tim Patalan
LabelSony
OriginDetroit, Michigan, U.S.
Certifications
  • US - Gold (50万枚以上)

R.E.M.などの持つカレッジロック的な感性をベースに、Pearl Jamなどの土の香りを融合させたサウンドを鳴らすバンドの1stアルバム。それほどヘヴィにはならず大らかな感覚を見せるサウンドでありながらも、同時に地に足を付けた力強さを感じさせる。次作の"Wax Ecstatic"では、より落ち着いた感覚を持ったアメリカンロックへの接近も見せている。このアルバムからは"Plowed"と"Molly (16 Candles Down the Drain)"の2曲のシングルがヒットし、アルバムもアメリカ国内だけで50万枚以上のセールスを記録した。

41.Babes in Toyland - Fontanelle

Babes in Toyland - Fontanelle Released1992.8.11
Type2nd Studio Album
GenreGrunge, Riot Grrrl
ProducerLee Ranaldo, Kat Bjelland
LabelReprise
OriginMinneapolis, Minnesota, U.S.

グランジにカテゴライズされる女性バンドの中で、最も直線的で激しい音を鳴らすバンドの2ndアルバム。ひたすら研ぎ澄ませたナイフのような切れ味鋭いパンキッシュでノイジーなサウンドは聴く者に恐怖すら感じさせる。アルバムの最初を飾る"Bruise Violet"を聴くだけでこのバンドの圧倒的な攻撃性にひれ伏してしまう。男性ヴォーカルのバンドでは決して代替できない強烈な個性が宿っている。アメリカ国内だけで20万枚以上のセールスを記録した。

42.Love Battery - Dayglo

Love Battery - Dayglo Released1992
Type2nd Studio Album
GenreGrunge, Psychedelic Rock
ProducerConrad Uno, Jon Auer
LabelSub Pop
OriginSeattle, Washington, U.S.

Screaming Treesに次ぐシアトルのサイケ系グランジを代表するバンド。The Doorsに通じる渋さや深みを強く感じさせるScreaming Treesに対し、こちらはサイケの持つ粘り気を前面に押し出している。このアルバムは彼らの2ndで、彼らの代表曲である"Out of Focus"をはじめとして、その透明感がありながらも粘着性の強いサイケデリアを存分に堪能できる。酩酊感の強いメロディの中からほのかに覗くポップな質感も彼らの魅力。

43.I Mother Earth - Dig

I Mother Earth - Dig Released1993.8.10
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Funk Metal, Alternative Rock
ProducerMike Clink
LabelCapitol
OriginToronto, Ontario, Canada
Certifications
  • CAN - Platinum (10万枚以上)

Soundgardenを思わせるうねりとJane's Addictionにも通じるファンクネス、さらにラテンの要素までも加えた独創的なサウンドを鳴らすカナダのバンドの1stアルバム。プログレッシブな感覚と乾いた土の香りが同居するあたりもまた面白い。シングルとしてもヒットした"Rain Will Fall"はまさにそのスタイルの完成形と呼ぶにふさわしい姿を見せる。少し宇宙的な雰囲気を取り入れた2ndの"Scenary and Fish"も非常に優れた作品なので、ぜひとも合わせて聴いてもらいたい作品。1stはカナダで1回、2ndはカナダで2回プラチナムを獲得した。

44.Tad - Inhaler

Tad - Inhaler Released1993.10.19
Type3rd Studio Album
GenreGrunge, Alternative Metal
ProducerJ Mascis
LabelGiant/Warner Bros.
OriginSeattle, Washington, U.S.

Nirvanaらと同じく80年代後期のアンダーグラウンド時代のグランジを支えたバンドの3rdアルバム。Gang of FourやKilling Jokeなどのポストパンクからの影響を強く受けながら、それをザクザクと斧で切り刻むかのようなタイトで重量感のあるメタリックなサウンドを鳴らす。そのヘヴィなサウンドに乗る胸を締め付けるようなメロディもまた彼らの魅力となっている。本作は彼らの代表曲である"Grease Box"をはじめ、そのスタイルを最もストレートに楽しむことができる。

45.Local H - As Good As Dead

Local H - As Good As Dead Released1996.4.16
Type2nd Studio Album
GenreGrunge, Post-Grunge (1st wave)
ProducerLocal H, Steven Haigler
LabelIsland
OriginZion, Illinois, U.S.

Nirvanaのチリチリとした暗さをHusker DuとWipersの鋭さで切り出したようなサウンドを鳴らすバンドの2ndアルバム。本作からは寂しげなムードを宿した"Bound for the Floor"がシングルとしてヒット、さらに攻撃性の強い"High-Fiving MF"や直線的な"Fritz's Corner"など、特にNirvanaが好きな人にオススメできる作品となっている。前作の"Ham Fisted"はさらに直線的な内容なので、こちらも合わせて手にしておきたい。アルバムはアメリカ国内だけで50万枚に近いセールスを記録している。

46.Sugar - Copper Blue

Sugar - Copper Blue Released1992.9.4
Type1st Studio Album
GenreAlternative Rock
ProducerBob Mould, Lou Giordano
LabelRykodisc/Creation
OriginMinneapolis, Minnesota, U.S.

伝説的なハードコアパンクバンドであったHusker Duのボブ・モールドが、Husker Duの解散後に新たに結成したバンドの1stアルバム。後期Husker Duが見せたクリアなメロディをより前面に押し出した作りとなっている。本来はグランジではないが、もともとHusker Duがグランジに多大な影響を与えたバンドであることから、グランジとの共通性も大きい。アルバムの完成度、評価ともにも非常に高く、1992年のNMEの"Album of the Year"にも選出された。本作からは"Helpless"がシングルヒットし、アルバムも一定程度の大きなセールスを収めた。よりグランジ色の強い攻撃的なサウンドを求める場合は次作EPの"Beaster"もオススメしておきたい。

47.Therapy? - Troublegum

Therapy? - Troublegum Released1994.2.7
Type2nd Studio Album
GenreAlternative Metal, Grunge
ProducerChris Sheldon
LabelA&M
OriginLarne, Northern Ireland

しばしば「(北)アイルランドのグランジ」と表現されたバンドの2ndアルバム。しかしながらグランジ的な沈みこむような暗さとは少し違い、Fugaziのようなチリチリとした哀感を宿したポストハードコア的な感覚とメタリックな硬質さ、さらにバンドの個性でもあるカキコキ鳴るパーカッシブなドラムなどを合わせ持ったサウンドを鳴らす。本作はそれらの要素の調和が最も上手くなされており、特に1曲目の"Knives"から5曲目の"Nowhere"までの流れは圧倒的な勢いの強さを感じさせる。全世界合わせて100万枚を超えるなど彼らの作品の中でも最も大きなセールスを記録した。

48.Days of the New - Days of the New (Orange)

Days of the New - Days of the New (Orange) Released1997.6.3
Type1st Studio Album
GenrePost-Grunge, Grunge
ProducerScott Litt
LabelOutpost
OriginCharlestown, Indiana, U.S.
Certifications
  • US - Platinum (100万枚以上)
  • CAN - Platinum (10万枚以上)
  • NZ - Gold (7500枚以上)

Alice in ChainsのダークネスとPearl Jamの土の香り、そこにThe Doorsの陰りを重ねたサウンドをアコースティックで鳴らすバンド。当時まだ高校生だったとは全く思えない渋みとひどく寂し気な雰囲気がアルバム全体に流れている。本作からリリースされた3曲のシングルが全てヒットし、アメリカ国内だけで100万枚以上のセールスを記録した。次作ではアコースティックスタイルは堅持しつつ、ワールドミュージック的な感覚を取り入れ、アルバム全体で一つのストーリーを組み立てるような作風となった。

49.Marcy Playground - Marcy Playground

Marcy Playground - Marcy Playground Released1997.2.25
Type1st Studio Album
GenrePost-Grunge, Grunge
ProducerJared Kotler
LabelCapitol
OriginNew York City, New York, U.S.
Certifications
  • US - Platinum (100万枚以上)

Days of the Newと同じくアコースティック色の強いアプローチを見せるバンドの1stアルバム。しかしながらこちらはAlice in Chainsのようなドロドロとした感覚は希薄で、Nirvanaのような冷たい暗さをNeil Youngなどのフォークに根差したサウンドで表現していく。そのため、暗くはありながらも落ち着きや温かみもあってサラリと聴かせるのが特徴。本作からは"Sex and Candy"が大きくヒットし、アルバムもアメリカ国内だけで100万枚以上のセールスを記録した。

50.Bush - Razorblade Suitcase

Bush - Razorblade Suitcase Released1996.11.19
Type2nd Studio Album
GenreGrunge, Post-Grunge (1st wave)
ProducerSteve Albini
LabelInterscope
OriginLondon, England, U.K.
Certifications
  • US - 3x Platinum (300万枚以上)
  • CAN - 5x Platinum (50万枚以上)
  • AUS - Gold (3万5千枚以上)
  • NZ - Gold (7500枚以上)
  • UK - Gold (10万枚以上)

前作の"Sixteen Stone"によって、アメリカで大きな成功を収めたイギリスのグランジバンドの2ndアルバム。より生々しいサウンドを指向するためにプロデューサーにスティーブ・アルビニを起用し、1stアルバムと比べて大幅に短期間で作り上げた作品。それゆえさらにNirvanaの模倣と批判されることにもなったが、同じくアルビニを起用したNirvanaの"In Utero"の作風にはそれほど近くはなく、むしろ意外と地味で静かな曲が多く含まれた作品となっている。バンドとして安定した人気を保っていたこともあり、アメリカ国内だけで300万枚以上のセールスを記録した。

51.Stone Temple Pilots - Tiny Music... Songs from the Vatican Gift Shop

Stone Temple Pilots - Tiny Music... Songs from the Vatican Gift Shop Released1996.3.26
Type3rd Studio Album
GenreAlternative Rock, Psychedelic Rock, Grunge
ProducerBrendan O'Brien
LabelAtlantic
OriginSan Diego, California, U.S.
Certifications
  • US - 2x Platinum (200万枚以上)
  • CAN - Platinum (10万枚以上)
  • AUS - Gold (3万5千枚以上)
  • NZ - Gold (7500枚以上)

2ndの"Purple"までのStone Temple Pilotsというと、強い酩酊感を持たせたヘヴィなサウンドにジャズなどの他の音楽性を取り入れるというスタイルだったが、本作ではそのスタイルを大幅に変更し、The Doors的な渋みのあるサイケ感を薄めるかわりに、サイケ期The Beatlesに通じる明度の高いサイケポップ的な感覚を大幅に導入している。さらにヴォーカルのスコット・ウェイランドの大きなルーツであるグラムロックの要素も取り入れ、60年代サイケポップとグラムを融合させた、このバンドの音楽性の広さを見せ付ける作品となった。アルバムの完成度は彼らの作品の中でも屈指のもので、グランジにはこうした側面もあるのだと知るのにふさわしいアルバムでもあるだろう。アメリカ国内だけで200万枚以上のセールスを記録。

52.The Afghan Whigs - Congregation

The Afghan Whigs - Congregation Released1992.1.31
Type3rd Studio Album
GenreAlternative Rock, Grunge, Soul-influenced Rock
ProducerGreg Dulli, Ross Ian Stein
LabelSub Pop
OriginCincinnati, Ohio, U.S.

パンクを基盤にソウルミュージックからの影響を強く溶け込ませることで、攻撃性とチリチリと焼け付くような切迫感、さらに深い渋みまで感じさせる独自のサウンドを作り出した。グランジと共通する暗さを持ってはいるが、ソウル+パンクという他にはないスタイルが強烈な個性となっている。次作の"Gentlemen"以降はさらにソウルへの接近を深め、アルバムを重ねるごとにその渋みも増していった。どの作品も完成度が高いので、より攻撃性の高い前作の"Up in It"を手にしても、渋みを深めた次作以降へ手を広げてもどちらも損はないだろう。

53.The Posies - Frosting on the Beater

The Posies - Frosting on the Beater Released1993.4.27
Type3rd Studio Album
GenrePower Pop, Grunge
ProducerDon Fleming
LabelDGC
OriginBellingham, Washington, U.S.

シアトルのグランジ系バンドとの交流が深かったこともあってか、グランジにカテゴライズされることもあるが、それ以上に90年代を代表するパワーポップとしての評価が高いバンドの3rdアルバム。Big Starなどの70年代パワーポップとThe Holliesの香りをたっぷり含んだサウンドに胸に染み入るようなメロディを重ねていく。このアルバムではグランジのエッセンスをほのかに加えることで少しザラついたサウンドとなり、メロディとの重なり具合がさらなる高みに達している。"Dream All Day"をはじめとした彼らの代表曲が多く含まれており、グランジリスナーとしても聴く価値が十分にある作品と言えるだろう。

54.Ash - Trailer

Ash - Trailer Released1994.10.24
Type1st EP
GenreGrunge, Britpop
ProducerAsh, Tim Russell, Marc Waterman
LabelInfectious Records
OriginDownpatrick, County Down, Northern Ireland

ほのかにグランジの香りがするパンキッシュで弾けるようなポップ感を持ったサウンドを鳴らすことで知られる彼らも、この最初期のアルバムに関してはNirvanaを連想させるかなりストレートなグランジ色の強いサウンドだった。グランジそのものと言っていい"Season"に始まり、本作らしいグランジ色と後の彼らに繋がるポップ感がひしめき合う様が面白い"Jack Names the Planets"など聴きどころが多い。グランジという観点からも手にして損はない作品と言えるだろう。

55.The Nixons - Foma

The Nixons - Foma Released1995.5.23
Type1st Studio Album
GenrePost-Grunge (1st wave), Grunge
ProducerMark Dodson, The Nixons
LabelMCA
OriginOklahoma City, Oklahoma, U.S.

Pearl Jamの流れを汲んだ土の香りを強く感じさせるサウンドだが、ストレートな攻撃性が強く、力で押し込んでいくような作風が多いのが特徴となっているバンドの1stアルバム。一方で本作からシングルとしてヒットした"Sister"では、もっと大らかなアメリカンロックのスタイルも見せるなど、決してゴリゴリとしたサウンド一辺倒ではない深みも持っている。ブルージーであるといったこともそれほどなく、攻撃性が強めのアメリカンロックとして音楽性が一貫しているので、その分だけとっつきやすいとも言えるだろう。

56.Moist - Silver

Moist - Silver Released1994.2
Type1st Studio Album
GenreAlternative Rock, Post-Grunge (1st wave), Grunge
ProducerKevin Hamilton, Moist
LabelCapitol/EMI
OriginVancouver, British Columbia, Canada
Certifications
  • CAN - 4x Platinum (40万枚以上)

Tears for Fearsの渋みのあるニューウェイブや、Procol Harumのような落ち着いたサイケの要素を取り込みながら、そこにグランジ的な重みのあるサウンドを乗せていくカナダのバンドの1stアルバム。そのためグランジらしさを持ってはいながらも、それ以上にしっとりとした質感を強く持ち合わせている。カナダではかなり人気が高く、"Silver"や"Believe"のシングルヒットをきっかけに本作も4回のプラチナムを獲得し、さらに次作の"Creature"も3回のプラチナムを獲得している。

57.The Jesus Lizard - Liar

The Jesus Lizard - Liar Released1992.10.10
Type3rd Studio Album
GenreNoise Rock, Grunge
ProducerSteve Albini
LabelTouch and Go
OriginAustin, Texas, U.S.

グランジというよりはBig Blackなどの流れを汲んだノイズロックを代表するバンド。FlipperやGang of Fourなどのポストパンクから強い影響を受けながらも、この3rdアルバムではポストパンク的な無機的なサウンドではなく肉感的でジャリジャリとした質感をより前面に押し出している。特にアルバムの最初を飾る"Boilermaker"の血が湧き踊るような激烈な攻撃性には圧倒されざるをえない。Nirvanaの"Oh, the Guilt"とスプリットシングルとしてリリースされた"Puss"も収録されている。

58.Skin Yard - Inside the Eye

Skin Yard - Inside the Eye Released1993
Type5th Studio Album
GenreGrunge
ProducerJack Endino
LabelCruz
OriginSeattle, Washington, U.S.

Green RiverやSoundgardenと並ぶ、80年代中期のグランジ黎明期を支えたバンドが93年にリリースした最終作の5thアルバム。プロデューサーとして有名なジャック・エンディーノがギタリストを務めている。Black Flagとポストパンクの実験性の融合を基本的なスタイルとしているが、アルバムを重ねるごとに徐々にメタリックな質感も強まっていった。そのため最終作でもある本作ではややメタリックな質感の中にひねくれた要素も顔を出し、なおかつ黎明期のグランジの香りも宿した完成度の高いグランジサウンドを聴くことができる。

59.My Sister's Machine - Diva

My Sister's Machine - Diva Released1992.1.24
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Alternative Metal, Heavy Metal
ProducerMy Sister's Machine, Ronnie S. Champagne
LabelCaroline
OriginSeattle, Washington, U.S.

80年代後期にシアトルのメタルシーンでダークなサウンドを取り入れる動きが起き始めたが、Alice in Chainsと並んでその先駆者にあたるのがこのバンドである。それゆえシアトルのグランジ系の中では最もメタルに近く、ワウを多用しながらSoundgardenに匹敵するほどの強烈なうねりを見せると同時に、メタル的な叙情性を持ったメロディを兼ね備えている。ヴォーカルのニック・ポロックは高校時代にレイン・ステイリーとSlezeというバンドを組んでおり、Alice in Chainsのレインとジェリーが出会うきっかけを作った人物でもあった。

60.You Am I - Sound As Ever

You Am I - Sound As Ever Released1993.10.25
Type1st Studio Album
GenreAlternative Rock, Grunge
ProducerLee Ranaldo
LabelrooArt
OriginSydney, New South Wales, Australia

SilverchairやThe Vinesも敬愛するオーストラリアを代表するグランジ/オルタナバンドの1stアルバム。The Whoなどのモッズ系サウンドを基盤にグランジ的な暗さを取り込んだサウンドを鳴らす。60年代的なとっつきやすさとねじれた感覚が同居しているのが面白い。次作以降ではより60年代的なサウンドに接近するが、本作ではSonic Youthのリー・ラナルドがプロデューサーを買って出ており、代表曲である"Berlin Chair"をはじめとしていくつかの曲でグランジ色が色濃く残っている。この作品以前にリリースした4枚のEPは入手はやや困難ではあるが、本作よりも遥かにストレートなグランジを鳴らしている彼らの姿を知ることができる。

61.Various Artists - Singles: Original Motion Picture Soundtrack

Various Artists - Singles: Original Motion Picture Soundtrack Released1992.6.30
TypeSoundtrack
GenreGrunge, Alternative Rock
ProducerVarious Producers
LabelEpic Soundtrax
OriginSeattle, Washington, U.S., etc.
Certifications
  • US - 2x Platinum (200万枚以上)

1992年に公開された映画「シングルズ」のサウンドトラック。当時のシアトルをテーマとした映画ということで、Pearl Jam, Alice in Chains, Soundgarden, Mudhoney, Screaming Trees, The Smashing Pumpkinsなど、グランジを代表するバンドの音源がそろっている。Pearl Jam, Soundgarden, Mudhoney, The Smashing Pumpkinsの提供曲はどれもレア曲で、クリス・コーネル(Soundgarden)の初ソロ曲である"Seasons"などは、この作品でしか聴くことができない。当時のグランジムーブメントの追い風を受け、アメリカ国内だけで200万枚以上のセールスを記録した。

62.Various Artists - Sub Pop 200

Various Artists - Sub Pop 200 Released1988.12
TypeCompilation Album
GenreGrunge, Alternative Rock, Garage Rock
ProducerJack Endino, Bruce Calder, Steve Fisk, etc.
LabelSub Pop
OriginSeattle, Washington, U.S., etc.

グランジ製造工場と呼ばれたシアトルのSub Popレーベルが1988年の末にリリースしたコンピレーションアルバム。Nirvanaのレア曲である"Spank Thru"が収録されていることで話題になることが多いが、本作の最大の魅力はグランジムーブメント以前のアンダーグラウンド時代の荒々しいサウンドが聴ける点にある。Green River, Soundgarden, Mudhoney, Tadといった重要バンドをはじめ、Blood Circus, Cat Butt, Swallowなどのマイナーながらも80年代後期のグランジシーンを支えるのに大きく貢献したバンドの音源まで収録されている。

63.Silverchair - Neon Ballroom

Silverchair - Neon Ballroom Released1999.3.16
Type3rd Studio Album
GenrePost-Grunge, Grunge
ProducerNick Launay
LabelMurmur, Epic
OriginNewcastle, New South Wales, Australia
Certifications
  • US - Gold (50万枚以上)
  • CAN - Platinum (10万枚以上)
  • AUS - 2x Platinum (14万枚以上)

中学時代にグランジとMetallicaの強い影響を受けたバンドとして始まった彼らも、アルバムを重ねるごとに音楽性を広げ、オーストラリアを代表するバンドとしての地位を確立するに至った。1stの"Frogstomp"では才能を感じさせながらも青さのあるサウンドだったが、その後は徐々にアートロック的な作風とグランジ的なサウンドの融合を進めるようになり、その一つの集大成としてこの3rdアルバムを作り上げた。本国オーストラリアでヒットしたのはもちろん、アメリカでも50万枚以上のセールスを記録した。次作の"Diorama"ではその傾向がさらに強まり、グランジからも離れていくものの、バロックポップを基盤としたアート感はさらなる高みに達することとなった。

64.Tripping Daisy - I Am an Elastic Firecracker

Tripping Daisy - I Am an Elastic Firecracker Released1995.6.20
Type2nd Studio Album
GenreNeo-Psychedelia, Grunge
ProducerTed Niceley
LabelIsland
OriginDallas, Texas, U.S.
Certifications
  • CAN - Platinum (10万枚以上)

サイケ期The Beatlesなどの明度の高いサイケデリアを軸に、パンクの疾走感を大きく取り込んだサウンドを鳴らすバンドの2ndアルバム。Husker Duとサイケ期The Beatlesの融合などと呼ぶこともできようか。サイケ系グランジバンドの中でも粘り気よりも透明感のあるサイケデリアを打ち出すのが特徴。本作はややポップな仕上がりだが、次作の"Jesus Hits Like the Atom Bomb"では持ち前の高い実験性も楽しむことができる。本作からはシングル"I Got a Girl"がヒットし、アルバムもカナダでプラチナムを獲得した。

65.Daisy Chainsaw - Eleventeen

Daisy Chainsaw - Eleventeen Released1992.10.6
Type1st Studio Album
GenreNoise Rock, Grunge
ProducerKen Thomas, Katie Jane Garside
LabelOne Little Indian
OriginLondon, England, U.K.

イギリスのロンドン出身のノイズロック/グランジバンドの1stアルバム。女性ヴォーカルを擁するバンドの中でもとりわけノイズ色が強く、ヴォーカルのK.J.ガーサイドのあまりに強烈なライブパフォーマンスでも話題となった。デビューシングルであり、本作にも収録されている"Love Your Money"がイギリス国内でヒットし、そのノイジーでパンキッシュでありながらもキャッチーさを持ち合わせたサウンドで注目された。本作のリリース後にヴォーカルのK.J.ガーサイドが精神的に参ってしまって脱退したこともあり、活動期間は決して長くはなかったものの、シーンに強いインパクトを残した。

66.Dizzy Mizz Lizzy - Dizzy Mizz Lizzy

Dizzy Mizz Lizzy - Dizzy Mizz Lizzy Released1994.3.4
Type1st Studio Album
GenrePost-Grunge (1st wave), Grunge, Hard Rock
ProducerNick Foss, Dizzy Mizz Lizzy
LabelEMI, Medley
OriginCopenhagen, Denmark
Certifications
  • DNK - 5x Platinum (25万枚以上)

デンマーク出身のグランジ/ポストグランジバンドの1stアルバム。日本ではメタル評論家として有名な伊藤政則氏が熱心に紹介したことからメタルリスナーからの支持が厚いが、日本以外ではグランジやポストグランジとしてカテゴライズされることが多い。そのサウンドはNirvanaなどのグランジからの影響が色濃く見られる一方で、王道ハードロックの色合いも強く、欧州メタルにも通じる叙情性を持ったメロディも顔を覗かせるなど、グランジとメタルの双方のファンから支持される要素を持ち合わせている。日本では"Glory"が特に注目されたが、本国デンマークでは"Love Is a Loser's Game"や"Waterline"がシングルヒットし、それにともなってアルバムも大きなセールスを収めた。

67.Hum - You'd Prefer an Astronaut

Hum - You'd Prefer an Astronaut Released1995.4.11
Type3rd Studio Album
GenreSpace Rock, Post-Hardcore
ProducerKeith Cleversley, Hum
LabelRCA
OriginChampaign, Illinois, U.S.

シューゲイザーやニューウェイブからの影響を基盤にしながら、サイケデリックな浮遊感に満ちたメロディを重ねることで、宇宙空間に浮かんでいるかのような幻想性を与えながら、それをザラついたサウンドに乗せて鳴らすバンドの3rdアルバム。Astronaut(宇宙飛行士)という語を含んだアルバムタイトルが象徴するように、曲のテーマにも宇宙的な要素がしばしば登場する。一般的にはグランジとしてよりは、スペースロックやポストハードコアとして語られることのほうが多い。本作からはシングル"Stars"がヒットし、それにともなってアルバムもトータルで25万枚を超えるセールスを収めた。また、Deftonesのチノ・モレノが最も影響を受けたアルバムの一つとしてこの作品を挙げている。

68.The Gits - Frenching the Bully

The Gits - Frenching the Bully Released1992
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Punk
ProducerScott Benson, Steve Fisk
LabelC/Z, Broken Rekids
OriginYellow Springs, Ohio, U.S.

直線的ながらもダークでザラついたパンクを持ち味としたバンドの1stアルバム。アンダーグラウンド時代のグランジからハードロック/メタルの要素を差し引いて、少しハードコアに近づけたようなサウンドとも言えよう。しかしアルバムリリースの翌年の1993年にはヴォーカルのミア・ザパタが性的暴行を受けたうえで殺害されるという形でバンドは悲劇的な結末を迎えてしまう。それを受けて作られた"Home Alive :The Art of Self Defense"というコンピレーションアルバムにはNirvana, Pearl Jam, Soundgarden, PUSAなど、数多くのシアトルのミュージシャンが参加した。

69.Jerry Cantrell - Boggy Depot

Jerry Cantrell - Boggy Depot Released1998.3.31
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Alternative Metal
ProducerJerry Cantrell, Toby Wright
LabelColumbia
OriginSeattle, Washington, U.S.

Alice in Chainsの3rdアルバムの後にリリースされた、AICのギタリストであるジェリー・カントレルのソロ1stアルバム。アルバムタイトルはかつて自身の父親が住んでいたこともあるオクラホマ州にあるゴーストタウンの名前から取られている。そうした経緯と符合するように、Alice in Chainsらしいヘヴィネスを見せると同時に陰りのある寂し気なアメリカンロックとしての雰囲気を強く宿している。AICの3rdアルバムの"Over Now"からの流れを感じさせるサウンドとも言え、AICの活動が順調に進んでいた場合に次に到達したであろう地点を見せてくれる作品としても価値があるだろう。レコーディングにはAICのメンバーであるショーン・キニー(Dr.)やマイク・アイネズ(B.)も参加している。

70.Mudhoney - Every Good Boy Deserves Fudge

Mudhoney - Every Good Boy Deserves Fudge Released1991.7.23
Type2nd Studio Album
GenreGrunge, Garage Punk
ProducerConrad Uno
LabelSub Pop
OriginSeattle, Washington, U.S.

最初期の"Superfuzz Bigmuff Plus Early Singles"や1stアルバムの頃はアルバム全体に地下室のような湿ったダウナー感覚が強く満ちていたが、そうした雰囲気を一定程度残しつつも全体的にカラッとした曲が増えている。しかしながらポップになりすぎるということは全くなく、彼らならではの攻撃性やヘロヘロとした感覚は継承され、ガレージロックをルーツとするグランジバンドとしての個性がより高まっている。アルバムの最初を飾る"Let It Slide"をはじめ、"Into the Drink"、"Who You Drivin' Now?"などこの時期を代表する曲が詰まっており、ガレージ色の強いグランジバンドを掘り下げていくうえでの基本となる作品と言ってもいいだろう。

71.The Fluid - Purplemetalflakemusic

The Fluid - Purplemetalflakemusic Released1993
Type4th Studio Album
GenreGrunge, Garage Punk
ProducerThe Fluid, Mike Bosley
LabelHollywood
OriginDenver, Colorado, U.S.

コロラド州デンバー出身のガレージパンク色の強いグランジバンド。Green Riverなどとほぼ同時期の1984年に活動を始め、Sub Popと契約した初のシアトル以外のバンドとなり、黎明期のグランジシーンの活性化にも大きく貢献した。また、"Sub Pop 200"に曲を提供していたことで知っている人も多いだろう。本作は93年にリリースされた彼らの最後の作品で、Mudhoneyなどに通じるガレージパンク色豊かで鋭い切れ味を見せながらも、一定の聴きやすさも内包したサウンドを聴くことができる。このスタイルのアルバムとしては高い完成度を誇っており、ガレージ系グランジの入門としても十分にオススメできる。

72.Paw - Dragline

Paw - Dragline Released1993.5.4
Type1st Studio Album
GenreGrunge
ProducerMr. Colson, Paw
LabelA&M
OriginLawrence, Kansas, U.S.

Pearl Jamに通じる土の香りのするサウンドにもう少しメタリックな要素を加え、そこに泥臭さすら感じさせるような野太いヴォーカルを重ねていくバンドの1stアルバム。一方で南部出身らしくサザンロックのようなゆったりとしたサウンドを鳴らしながら、そこにDinosaur Jr.にも通じる胸を締め付けるようなメロディを重ねるなど、ルーツロックからオルタナティブロックまでが混然一体となったスタイルを見せる。90年代の空気をたっぷりと吸った南部ロックの在り方の一つと言うこともできるだろう。

73.Gruntruck - Push

Gruntruck - Push Released1992.10.6
Type2nd Studio Album
GenreGrunge, Alternative Metal
ProducerGruntruck, Jack Endino, Gary King
LabelRoadrunner
OriginSeattle, Washington, U.S.

黎明期のグランジを支えたSkin Yardのヴォーカルであるベン・マクミランによって結成されたバンドの2ndアルバム。メタリックなグランジの基本形と呼べるようなサウンドで、一定のダークネスを帯びながらSoundgardenにも共通するうねりやグルーヴを見せる。一方で後期Skin YardをよりHR/HMに近づけたような感触があるため、黎明期のグランジやポストパンク的なひねりをも内包している。メタリックなグランジという共通項を持ちながらも、完全にメタルをルーツとしているMy Sister's Machineあたりと聴き比べてその違いを体感してみるのも面白いだろう。

74.Fudge Tunnel - The Complicated Futility of Ignorance

Fudge Tunnel - The Complicated Futility of Ignorance Released1994.9
Type3rd Studio Album
GenreSludge Metal, Grunge
ProducerAlex Newport
LabelEarache
OriginNottingham, England, U.K.

しばしば「イギリスのグランジ」と形容されるバンドの3rdアルバム。しかし、アメリカのグランジバンドほどメロディアスではなく、むしろ大衆性をあまり意識しないスラッジメタルと言ったほうが近いだろう。サウンドはとにかく重々しく、ヴォーカルはポストハードコアにも通じるような哀感を持たせた咆哮系のスタイルを見せる。メタリックでズルズルと引きずるようなヘヴィネスに飲み込まれたFugaziというような形容もできなくはない。ヴォーカルのアレックス・ニューポートは後にプロデューサーとしても活躍するようになり、At the Drive-InやMars Voltaのプロデューサーも務めている。

75.Failure - Magnified

Failure - Magnified Released1994.3.8
Type2nd Studio Album
GenreGrunge, Space Rock, Post-Hardcore
ProducerFailure
LabelSlash
OriginLos Angeles, California, U.S.

諦念感に満ちたザラついたギターロックを聴かせるバンドの2ndアルバム。スペースロックとグランジとポストハードコアの中間に位置するが、本作について言えば感覚的にはグランジに最も近い。ただし、次作ではそれまでより宇宙的なサウンドとしての色合いが強まっている。本作ではサウンド面ではスペーシーな要素も顔を見せるが、それらも全てグランジ的な諦念感の中へと落とし込まれている。Nirvanaにも通じるサウンドを基盤にその攻撃性を全て内側に向けて、曲を追うごとにあらゆるものを絶望と諦めの淵へと引きずり込み、そこから外へ出て行くことができないかのような救いの無さに満たされている。

76.Various Artists - Deep Six

Various Artists - Deep Six Released1986.3
TypeCompilation Album
GenreGrunge, Proto-Grunge
ProducerChris Hanzsek, Tina Casale
LabelC/Z
OriginSeattle, Washington, U.S., etc.

Green Riverの"Come on Down"に次ぐ、2番目に古いグランジアルバムという歴史的な位置付けを持つコンピレーションアルバム。グランジの起こりを知るうえではこれほど重要な作品はないと言ってもいいほど。Black Flagからの影響をベースにハードロックやポストパンクなどをミックスさせ、黎明期のグランジを作り上げた4大バンドと呼びうるGreen River, Soundgarden, Skin Yard, Melvinsが全て参加しており、さらに後にMother Love Boneのフロントマンを務めるアンドリュー・ウッドが率いるMalfunkshun、80年代初期からシアトルのアンダーグラウンドシーンで活躍したThe U-Menなど、まさに80年代中期のグランジのプロトタイプがそのまま詰まっている。このアルバムを聴かずしてグランジの歴史を語ることはできないだろう。

77.The Supersuckers - The Smoke of Hell

The Supersuckers - The Smoke of Hell Released1992.9.4
Type1st Studio Album
GenreGarage Punk, Grunge
ProducerJack Endino
LabelSub Pop
OriginTucson, Arizona, U.S.

疾走感が強いストレートなガレージパンクを鳴らすバンドの1stアルバム。他のガレージパンク系グランジバンドに比べても直線的で、南部出身ということもあってかそのサウンドからは砂埃の香りすら感じられる。Sub Pop所属であったため、グランジと関連付けられて語られることも多いが、あくまでガレージパンクに基盤を置いたバンドである。ただ、このアルバムでは最初を飾る"Coattail Rider"をはじめとしてグランジとも共通するねじれを感じさせる曲もあり、グランジ好きを強く引き付けるだけの力を持っている。また、ごく普通のカントリー系のアルバムを出すなどの一面も持っている。

78.Gumball - Super Tasty

Gumball - Super Tasty Released1993
Type2nd Studio Album
GenreGrunge, Alternative Rock
ProducerButch Vig
LabelColumbia
OriginNew York City, New York, U.S.

インディーロック系のプロデューサーとしても有名なドン・フレミングによるバンドの2ndアルバム。Dinosaur Jr.のJ・マスキスも2曲でギタリストとして参加している。パンキッシュながらもグランジ的な脱力したグルーヴを核にしつつ、そこにPixiesにも通じるような心地いいひねりを取り入れていく。そんなねじれたポップセンスにサイケデリックな要素も垣間見えるメロディの組み方からは、シアトルのサイケ系グランジバンドのLove Batteryと共通するセンスも感じ取られる。また一方ではパワーポップ的な要素まで取り入れるなど、様々なスタイルを融合させながらねじれさせていく様は、まさにインディー系ひねくれポップといった表現が似合う。

79.Gas Huffer - One Inch Masters

Gas Huffer - One Inch Masters Released1994
Type3rd Studio Album
GenreGarage Punk, Grunge
ProducerKurt Bloch
LabelEpitaph
OriginSeattle, Washington, U.S.

シアトル出身のガレージパンク系グランジバンドの3rdアルバム。The Supersuckersほど疾走感はなく、グランジ黎明期を支えたThe U-menのトム・プライスらで結成されたこともあり、サイコビリーからの影響を顕著に見せる猥雑なサウンドが特徴となっている。それでもThe U-Menに比べれば遥かにストレートなサウンドで、パンキッシュな直線性とガレージ/サイコビリー由来のねじれの融合が最大の魅力となっている。特にガレージ的な猥雑さとグランジ的なねじれがミックスされた1曲目の"Crooked Bird"は素晴らしく、このバンドの魅力が凝縮されていると言っていいだろう。

80.Dandelion - Dyslexicon

Dandelion - Dyslexicon Released1995.8.1
Type2nd Studio Album
GenreGrunge
ProducerPhil Nicolo, Ian Cross
LabelSony
OriginPhiladelphia, Pennsylvania, U.S.

フィラデルフィア出身のグランジバンドの2ndアルバム。性急でパンキッシュな曲ではNirvanaやMudhoneyを連想させ、サイケデリック色の強い曲ではAlice in Chainsに近い表情を見せる。もともとサイケを主要なルーツとしていたこともあり、いかにもグランジ的なサウンドの中に陰鬱さを伴わせつつサイケなメロディを自然と絡めてくることが多い。シアトル系と共通性の高いサウンドを持っているので、グランジ好きとしてはとっつきやすいバンドでもあるだろう。このアルバムからシングルとしてリリースされた"Weird-Out"がビルボードのModern Rockチャートで14位になるなど、一定の注目を受けることにも成功している。

81.Dig - Dig

Dig - Dig Released1993.10.26
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Shoegazing
ProducerDave Jerden, Dig
LabelRadioactive/MCA
OriginLos Angeles, California, U.S.

シューゲイザーからの影響を色濃く見せるグランジバンドの1stアルバム。シューゲイザーやドリームポップの持つ浮遊感を基盤としながら、そこにTadを連想させるようなヘヴィなギターを絡ませてくるのが特徴。ザクザクとしたギターが目立つ曲はいかにもグランジといった作風である一方、ドリームポップ色が強い曲もあるなど、1枚のアルバムの中でもその音楽性のバリエーションは広い。その中から両者の要素を上手くミックスした"Believe"がシングルとしてヒットし、ビルボードのModern Rockチャートで19位に達している。また、ヴォーカルのスコット・ハックウィズはRamonesの1993年のアルバム"Acid Eaters"のプロデューサーに抜擢されるなど、その後はプロデュース業にも活躍の場を広げている。

82.Treepeople - Guilt, Regret, Embarrassment

Treepeople - Guilt, Regret, Embarrassment Released1991
Type1st Studio Album
GenreIndie Rock, Grunge, Alternative Rock
ProducerSteve Fisk, Stuart Hallerman
LabelToxic Shock
OriginBoise, Idaho, U.S.

インディーロック色の強い性急でパンキッシュなサウンドにDinosaur Jr.にも通じる哀感を流し込んだような感触を見せるバンドの1stフルレンスアルバム。ノイジーな攻撃性を持っていながら、そのチリチリとした刺々しさを感じさせるサウンドとメロディは内向きなエネルギーに満ちていて、強い物悲しさを宿しながら胸をギュッと締め付けてくる。アイダホ州出身ではあるが、シアトルのC/Zレコードから作品をリリースしていたこともあって、シアトル出身のグランジバンドと近い位置にあると見られることが多い。主要メンバーだったダグ・マーシュが後にBuilt to Spillを結成したことでも知られている。

83.Seaweed - Despised

Seaweed - Despised Released1991.7
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Post-Hardcore
ProducerJack Endino, Seaweed
LabelSub Pop
OriginTacoma, Washington, U.S.

80年代的なシアトル系グランジにも通じるダーティーなパンクとFugaziなどのポストハードコア的な哀感をミックスしたようなサウンドを鳴らすSub Pop系バンドの1stアルバム。アルバムを重ねるにつれて徐々にポストハードコアへの接近を進めていくが、本作でもアルバムの最初を飾る"Selfish"においてその片鱗を見ることができる。一方で初期シングルの収録曲を集めた後半4曲などでは、彼ららしいダラけた感覚を持ったひねりの効いたパンキッシュなサウンドを聴くことができる。本作はこのバンドの持つそうした2つの要素が交わっていく瞬間を切り取ったアルバムと言うこともできるだろう。

84.Kerbdog - On the Turn

Kerbdog - On the Turn Released1997.3.31
Type2nd Studio Album
GenreGrunge, Alternative Metal
ProducerGarth "GGGarth" Richardson
LabelFontana Records
OriginKilkenny, Ireland

アイルランド出身のグランジ/オルタナメタルバンドの2ndアルバム。メタル系とオルタナ系の双方のメンバーが集まって結成されたことで、ゴリゴリとしたヘヴィなサウンドの中にもオルタナ的な要素を垣間見ることができる。基本的にはグランジを通過したオルタナメタル的なサウンドではあるが、そこに耳に残るメロディを絡めていく上手さを持っていた。また、このアルバムではそうしたスタイルの曲だけにとどまらず、シングルとしてリリースされた"Sally"や"Mexican Wave"を中心に、グランジ的な攻撃性にキャッチーさを持ち合わせた曲も加わることで、1stアルバムと比べてその音楽性の幅が広がっている。

85.Clutch - Transnational Speedway League

Clutch - Transnational Speedway League Released1993.8.17
Type1st Studio Album
GenreStoner Rock, Grunge
ProducerJon Burnside, Steven Haigler
LabelEastWest
OriginGermantown, Maryland, U.S.

90年代初期から途切れることなく活動し続けるストーナーロックバンドの1stアルバム。初期の頃はパンキッシュで直線的な攻撃性も強く見せていたため、グランジにもカテゴライズされることが少なくなかった。60年代後期から70年代初期を思わせる煙の香りのする原初的なハードロックをよりグルーヴィーに仕立てたサウンドで、とにかく泥臭く、疾走感を持ちながらもひたすらうねるサウンドに唸るようなヴォーカルを重ねていく。次作以降はファンクなどの要素もさらに強めつつ、よりどっしりとしたサウンドに移行していった。グランジ的な視点からは本作以上に疾走感の強いEP"Impetus"なども強くオススメできる。

86.Hey - Fire

Hey - Fire Released1993.2.8
Type1st Studio Album
GenreGrunge
ProducerKatarzyna Kanclerz, Andrzej Puczynski
LabelIzabelin Studio
OriginSzczecin, Poland
Certifications
  • POL - 4x Platinum (70万枚以上)

ポーランドを代表するグランジバンドの1stアルバム。ヴォーカルは女性が務めている。ハードロック的な感覚を持ちつつ、そこにグランジ的なダークネスをまとわせていく。そのダークなハードロックは初期のPearl Jamから土臭さを薄めたサウンドと形容することもできるよう。さらにゴシック的な要素を少し取り入れることによって、不気味なムードを高めることにも成功している。本国ポーランドでは大きな成果を収め、国民的バンドと呼びうるほどの支持を得ているだけあって、アルバムの完成度は高い。4th以降はエレクトロニカ寄りになり、歌詞もポーランド語がメインとなるが、2ndの"Ho!"や3rdの"?"はグランジ色も強く十分にオススメできる。

87.Expanding Man - Head to the Ground

Expanding Man - Head to the Ground Released1996.8.27
Type1st Studio Album
GenrePost-Grunge (1st wave), Grunge
ProducerMike Denneen
LabelColumbia
OriginLong Island, New York, U.S.

Pearl Jamを思わせる土の香りを強く漂わせるバンドの1stアルバム。グランジ的なダークネスを感じるというよりは、むしろ大らかなサウンドで、Pearl Jamの"Vs."の持つアメリカンロック的な部分を引き出して拡大したかのような雰囲気を持っている。それなりにハードではあるもののあまり攻撃的にもならず、カレッジロックのような感触も希薄であるなど、グランジを通過した超王道なアメリカンロックとしてのポストグランジそのものとも呼べる一方で、商業的な意味での歌モノ臭さもなく、実に素直な90年代的アメリカンロックバンドと言えよう。本作からリリースされたシングル"Download (I Will)"がビルボードのMainstream Rockチャートで22位に達している。

88.7 Year Bitch - !Viva Zapata!

7 Year Bitch - !Viva Zapata! Released1994.6.28
Type1st Studio Album
GenreGrunge
ProducerJack Endino, 7 Year Bitch
LabelC/Z
OriginSeattle, Washington, U.S.

シアトル出身の女性グランジバンドによる1stオリジナルアルバム。アルバムのタイトルは1993年に殺害されたThe Gitsのミア・ザパタへの敬意を込めてつけられたもの。ダークなパンクにポストパンクのひねくれた感覚を取り入れ、そこにハードロックの持つ硬質さも加えたそのサウンドは、アンダーグラウンド時代のグランジを忠実に継承したものと言え、パンク色が強かった初期のL7とも共通するものを感じさせる。そこに重ねられるファンク的な要素も含んだヴォーカルもまたバンドの大きな個性となっている。

89.Cosmic Psychos - Go the Hack

Cosmic Psychos - Go the Hack Released1989.11
Type2nd Studio Album
GenreGarage Punk, Grunge
ProducerJohn Bee
LabelSub Pop, Shagpile
OriginMelbourne, Victoria, Australia

シアトルの多くのバンドへも大きな影響を与えたオーストラリアのガレージパンク系バンドの2ndアルバム。Nirvanaのカート・コバーンもこのバンドのファンだったことが知られている。ガレージ色を持ったパンクではあるものの、60年代ぽさも内包した他のガレージ系グランジバンドとは大きく異なり、そのザラザラとしたダーティーでラフなサウンドはパンキッシュなグランジの見本とも呼べるものとなっている。初期の疾走感が強かった頃のL7とも共通する点が多く、このアルバムの最初を飾る"Lost Cause"は後にL7が"Fuel My Fire"と改題したうえで事実上のカバーをしている。

90.Coffin Break - Thirteen

Coffin Break - Thirteen Released1992
Type4th Studio Album
GenreGrunge, Punk
ProducerJack Endino
LabelEpitaph
OriginSeattle, Washington, U.S.

シアトルのハードコアパンク寄りのグランジバンドの4thアルバム。グランジにカテゴライズされるバンドの中では特にパンク色が強い。シアトルのパンク系グランジとしては珍しくガレージ色が希薄で、初期の頃はもっとストレートなハードコアパンクに近かった。アルバムを重ねるごとにハードコア色は薄まり、少しずつ聴きやすくなってはきたものの、このアルバムでもハードコアを通過した血生臭さとそれにともなう陰鬱さを感じさせるパンクという点は堅持されている。Nirvanaのカート・コバーンが気に入っていたバンドとしても知られている。

91.Tumbleweed - Return to Earth

Tumbleweed - Return to Earth Released1996.9.1
Type3rd Studio Album
GenreStoner Rock, Grunge
ProducerPaul McKercher
LabelPolydor
OriginTarrawanna, New South Wales, Australia

オーストラリアのストーナーロック/グランジバンドの3rdアルバム。ブリブリとうなり倒す疾走系ストーナーとしての完成度が著しく高く、アルバムの最初を飾る"Lava Bread"のまるで砂漠地帯を巨大な車で疾走しているかのような強烈な勢いには圧倒されてしまう。初期のアルバムのサイケとガレージをミックスしたようなサウンドからさらに一皮剥け、アルバム全体にグルーヴィーな感覚が宿っている。また"Silver Lizard"などでは、地を這うようなグランジにも通じるダウナー系ストーナーサウンドも聴け、ストーナーとしてもグランジとしても実に良質な内容となっている。疾走系ストーナーが好きなら見逃せない作品と言っていいだろう。

92.Magnapop - Magnapop

Magnapop - Magnapop Released1992.10.16
Type1st Studio Album
GenreAlternative Rock, Grunge
ProducerMichael Stipe, Magnapop
LabelPlay It Again Sam Records
OriginAtlanta, Georgia, U.S.

R.E.M.やHusker Duを通過したそこそこハードでパンキッシュなオルタナバンドの1stアルバム。プロデュースにR.E.M.のマイケル・スタイプが関わっている。アルバムの最初を飾る"Garden"はグランジそのものといったサウンドだが、全体として見ればグランジとの共通性も感じるほどほどのダークさやノイジーさを持ったオルタナロックと言ったほうが近い。また、本作収録の"Favorite Writer"は後にR.E.M.によってカバーされている。2ndの"Hot Boxing"ではHusker Du/Sugarのボブ・モールドがプロデュースを務め、音楽的にもややSugarに近づき、シングルの"Slowly Slowly"がビルボードのModern Rockチャートの25位に入るなどした。

93.Birdbrain - Bliss

Birdbrain - Bliss Released1995.8.15
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Post-Grunge (1st wave)
ProducerJoey Ammo, James Dennis
LabelTVT Records
OriginBoston, Massachusetts, U.S.

ハードロックを基盤にオルタナティブな実験性を大幅に加え、そこにグランジ的なダークネスも取り込んだバンドの1stアルバム。グラムロックぽさも見せながらオルタナ特有のひねくれた感覚を強く打ち出した"Confession"を筆頭に、いかにもグランジ的な曲も多く含みながらも、ハードロックとオルタナティブな要素を絶妙にミックスさせた曲なども多く、荒廃した町の風景が浮かぶようなそれらの楽曲群は非常に独創性が高い。2ndの"Let's Be Nice"ではやや普遍的なポストグランジに近づいたが、"Youth of America"が映画"Scream"に使われたことで一定の注目も受けた。

94.The Mono Men - Wrecker!

The Mono Men - Wrecker! Released1992
Type2nd Studio Album
GenreGarage Punk, Grunge
ProducerRichard Head
LabelEstrus
OriginBellingham, Washington, U.S.

ガレージパンク系のグランジバンドの中でも特に60年代の原初的なガレージロックに忠実なサウンドを鳴らすバンドの2ndアルバム。他のガレージパンク寄りのグランジ系バンドがパンクを基盤にガレージ的な要素を取り入れているのに対し、このバンドは逆にThe Sonicsなどの60年代のガレージロックをそのまま継承しながらパンクに少し接近し、さらにグランジ的なダーティーな雰囲気を軽く加えたような質感を持っている。それゆえ60年代的なガレージに通じる粗さは強く見せながらも、サウンド的にはあまりひねくれていないのも個性となっている。

95.Pond - Pond

Pond - Pond Released1993.2.12
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Alternative Rock
ProducerJon Auer
LabelSub Pop
OriginPortland, Oregon, U.S.

インディーロック的なグランジを代表するSub Pop系グランジバンドの1stアルバム。パンキッシュな攻撃性もメタリックな硬質さもあまり持ち合わせていないが、サイケ系グランジの持っている粘り気や浮遊感にHumやFailureとも共通するスペーシーな感覚を重ね、さらにグランジらしいノイジーな質感を持たせながら、物悲しさを強く宿した胸を締め付けるようなメロディを折り重ねていく、様々なインディーロック系のグランジの持つ個性を一つにまとめあげたかのようなその音楽性はNirvanaやAlice in Chainsなどとはまた違った形のグランジの姿を明確に浮かび上がらせる。

96.Poster Children - Tool of the Man

Poster Children - Tool of the Man Released1993.2.26
Type3nd Studio Album
GenreAlternative Rock, Grunge
ProducerMike McMackin
LabelSire
OriginChampaign, Illinois, U.S.

パンクを基盤にPixiesなどにも通じるひねくれた要素を加えつつ、グランジ的な風味を忍ばせたオルタナ系バンドによる3rdアルバム。グランジと呼ばれることはあまり多くはなく、ダークな質感もそこまで強くないバンドではあるが、"Tommyhaus"や"Idiot Show"のようにグランジそのものといった楽曲が見られたり、グランジ的なザラついた攻撃性を取り入れている曲が多く、グランジ好きにも十分にアピールできるだけのものを持ち合わせている。時折サイケとスペーシーな感覚をミックスしたような浮遊感の強いサウンドが見られるのも特徴。

97.Hammerbox - Numb

Hammerbox - Numb Released1993.3.9
Type2nd Studio Album
GenreGrunge
ProducerMichael Beinhorn
LabelA&M
OriginSeattle, Washington, U.S.

ダークなムードを持ったパンクをベースにしながら、そこにHR/HMに由来する硬質さを上手く加えていくバンドの2ndアルバム。メンバーは男性が多いが、ヴォーカルは女性が務めている。1stではもっと性急で勢いのあるダークなパンクとしての色合いが強かったが、この作品では随所にハードロック的なアプローチが見られ、グランジ的な暗さやねじれとメタリックな硬質さとパンクの疾走感、そして爽快感をも感じさせるメロディが絡み合うようになり、音楽性により一段の高まりが見られる。"Trip"はまさに彼らのそうしたスタイルの完成形とも呼べるだろう。

98.Hazel - Toreador of Love

Hazel - Toreador of Love Released1993.8.27
Type1st Studio Album
GenreGrunge
ProducerJack Endino
LabelSub Pop
OriginPortland, Oregon, U.S.

Pondと同じくポートランド出身の後発系Sub Popバンドの1stアルバム。その音楽性はいかにもインディー系のシアトルサウンドと呼べるもので、ダークでパンキッシュなサウンドの中にグランジ的なねじれを取り入れ、そこにDinosaur Jr.などにも通じるしっとりとした哀感を持ったメロディを絡めてゆく。そうしたねじれを持った哀感を表現するのに長けたバンドなので、強烈な攻撃性やドロドロとしたヘヴィネスを見せることはないが、インディー系グランジらしい要素はどれも上手く押さえられており、Pondほどひねくれてないのでとっつきやすくもある。なぜかメンバーの中にダンサーがいるのも彼らの大きな個性の一つ。

99.Drain STH - Horror Wrestling

Drain STH - Horror Wrestling Released1996.6.5
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Alternative Metal
ProducerDrain STH, Adam Kviman
LabelMVG Records
OriginStockholm, Sweden

メンバーが全て女性で構成されたスウェーデンのグランジ/オルタナメタルバンドの1stアルバム。バンド名のSTHはストックホルムを意味している。サウンドはまさにAlice in Chainsの直系と呼べるもので、ヘヴィでドロドロとしたサウンド、不気味で粘り気のあるメロディ、念仏めいたヴォーカルと、AICの"Dirt"と"Alice in Chains"の2枚をミックスしたようなサウンドが聴ける。"I Don't Mind"などの2枚のシングルがアメリカのMainstream Rockチャートで33位と25位となかなかの好成績を収めた。2ndアルバムにはBlack Sabbathのトニー・アイオミが参加し、それがきっかけでこのバンドのヴォーカルのマリア・ヒョホルムと後に結婚している。

100.Truly - Fast Stories... from Kid Coma

Truly - Fast Stories... from Kid Coma Released1995.6.20
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Psychedelic Rock
ProducerSeattle, Washington, U.S.
LabelCapitol
OriginSeattle, Washington, U.S.

Soundgardenのヒロ・ヤマモトとScreaming Treesのオリジナルドラマーだったマーク・ピッケレルらによって結成されたサイケ系グランジバンドの1stフルレンスアルバム。他のサイケ系グランジバンドがあまりダークな雰囲気を見せないのに対し、このバンドはScreaming Treesにも通じる渋みを持ちながら、The DoorsやThe Electric Prunesのような陰りを持った60年代サイケバンド的なダークネスとグランジ的な陰鬱さをミックスした、暗闇の中で妖しく光るような美しいサイケデリアを見せる。

101.Eve's Plum - Envy

Eve's Plum - Envy Released1993.8.31
Type1st Studio Album
GenreAlternative Rock, Grunge
ProducerSteve Boyer
Label550 Records
OriginNew York City, New York, U.S.

Echo & the BunnymenやBlondieなどのニューウェイブ系バンドからの影響が色濃いオルタナバンドの1stアルバム。ヴォーカルは女性が務めている。いかにもニューウェイブ的なサウンドが見られる一方で、それがグランジ的な荒々しいスタイルに急に切り替わるなど、両者の要素を1曲の中に同居させることで80年代的な感覚と90年代のムードを融合させることに成功している。また、シングルの"I Want It All"がビルボードのModern Rockチャートで30位を記録している。ヴォーカルのコリーン・フィッツパトリックは後にVitamin C名義でソロ活動を始め、ソロの1stアルバムで100万枚以上のセールスを記録するなど、バンド時代以上の成功を収めている。

102.The U-Men - Solid Action

The U-Men - Solid Action Released1999
TypeCompilation Album
GenreProto-Grunge, Grunge, Psychobilly
ProducerJohn Nelson, The U-Men, etc.
LabelChuckie-Boy Records
OriginSeattle, Washington, U.S.

60年代ガレージやサーフロックにThe Crampsなどのサイコビリーを融合させ、さらにThe Birthday Partyなどのポストパンクの混沌を流し込んだようなサウンドを鳴らすシアトルのバンド。このアルバムには彼らが活動していた頃に残した音源のほぼ全てが収録されている。Black Flagなどからの影響はあまり強くないため、80年代グランジのスタイルとはあまり近くなく、むしろグランジに影響を与えたバンドの一つとして、黎明期のグランジに連なる生々しい激性を伝えてくれるバンドと言ったほうが適切だろう。活動していた頃の全ての楽曲を求める場合は、2017年にリリースされた2枚組のアルバム"U-Men"をオススメしたい。

103.Dogstar - Our Little Visionary

Dogstar - Our Little Visionary Released1996.9.28
Type1st Studio Album
GenrePost-Grunge (1st wave), Grunge
ProducerEd Stasium
LabelZoo Entertainment
OriginLos Angeles, California, U.S.

キアヌ・リーブスがベースを担当していたことで知られるポストグランジ/グランジバンドの1stフルレンスアルバム。グランジというよりは初期のポストグランジに近く、The Replacementsの温かみのあるパンクやR.E.M.やSoul Asylumの流れを汲んだカレッジロック的な感性を継承しつつ、そこにPearl Jamに通じる土の香りのする力強いサウンドを重ねていく。グランジ的な攻撃性を打ち出すバンドというよりは、奇をてらわないシンプルなアメリカンロックにグランジ的なサウンドアプローチを取り入れているといった感触のほうが強い。

104.Sweet Water - Sweet Water

Sweet Water - Sweet Water Released1993
Type2nd Studio Album
GenreGrunge, Alternative Rock, Psychedelic Rock
ProducerDon Gilmore
LabelAtlantic
OriginSeattle, Washington, U.S.

シアトルのサイケ色の強いグランジバンドの2ndアルバム。その粘り気のあるサイケ感などにLove Batteryと共通するものが多く見られるが、ポップな質感を覗かせることは少なく、全体的によりひねったアプローチを見せてくることが多い。また、そうした粘り気のあるサイケデリアの中にインディーロック系グランジに通じる陰りを忍ばせてくることが多く、これもまた他のサイケ系グランジにはあまり見られない個性となっている。次作の"Superfriends"では、もっとシンプルでパワーポップの要素も感じさせるパンキッシュなサウンドに接近することになった。

105.Salt - Auscultate

Salt - Auscultate Released1995
Type1st Studio Album
GenreGrunge
ProducerDag Lundquist, Salt
LabelIsland Records, MVG Records
OriginStockholm, Sweden

Drain STHと同じくスウェーデンのストックホルムで結成された女性ヴォーカルを擁するグランジバンドの1stアルバム。Drain STHがAlice in Chains直系とも呼べるサウンドを鳴らすのに対し、こちらはメタル色は薄くNirvanaやHoleに近いスタイルとなっている。ザラつきと鋭さのある印象を強く与えながらも、メロディに一定のポップ感を持たせた女性ヴォーカル系グランジの王道を行くサウンドとなっている。中でもシングルとしてもリリースされた"Bluster"の完成度が非常に高く、アメリカのModern Rockチャートでも21位に入るなどした。

106.Flop - Whenever You're Ready

Flop - Whenever You're Ready Released1993.9.21
Type2nd Studio Album
GenrePop Punk, Power Pop, Grunge
ProducerMartin Rushent, Flop
Label550 Music
OriginSeattle, Washington, U.S.

シアトル出身のバンドとしては異色のポップなメロディを宿したパンクロックを鳴らすバンドの2ndアルバム。60年代ロックやパワーポップからの影響もそのメロディなどから顕著に見ることができる。このアルバムではイントロなどにグランジ的なアプローチや重さを加えながら、曲が進むにつれて彼ららしいポップな質感が顔を出すといった展開が多く見られ、グランジとポップパンクの絶妙な融合が見られる作品となっている。"Regrets"や"Pluto"などはまさにその代表格で、曲の前半だけを聴くとグランジだが、全体を通して聴くとポップな肌触りのほうがより強く残るようになっている。

107.Fluf - Home Improvements

Fluf - Home Improvements Released1994
Type2nd Studio Album
GenreGrunge, Punk
ProducerOtis Barthoulameu
LabelHeadhunter Records
OriginSan Diego, California, U.S.

グランジの風味の香るラフなパンクを鳴らすバンドの2ndアルバム。Husker DuやSugarに通じるキレがありながらもメロディアスな要素を持ったパンクサウンドを基盤としつつ、そこにDinosaur Jr.のようなだらけた感覚を取り入れ、濁りのあるヴォーカルを重ねるというスタイルを持っている。その一方でストーナーロックにも近い泥臭さのあるサウンドや、Nirvanaの"Bleach"とも重なるようなグランジを鳴らすこともあるなど、パンクを最も主要な軸としながらも異なる音楽性を混在させるあたりも大きな個性となっている。

108.Second Coming - Second Coming

Second Coming - Second Coming Released1998.9.22
Type2nd Studio Album
GenreGrunge, Post-Grunge, Alternative Metal
ProducerKelly Gray, Dudley Taft
LabelCapitol
OriginSeattle, Washington, U.S.

Alice in Chainsのレイン・ステイリーの高校時代からの友人でもあり、Slezeというバンドを一緒にやっていたメンバーでもあるジョニー・バコラス(B.)とジェームズ・バーグストロム(Dr.)らによって結成されたバンドの2ndアルバム。1stアルバムでは電子音を多用したサウンドだったが、大幅なメンバーチェンジを経た本作ではAlice in Chainsにも通じるBlack Sabbath色の強いヘヴィで粘り気の強いサウンドへと変化した。アルバムからは"Soft"と"Vintage Eyes"の2曲がヒットし、どちらもビルボードのMainstream Rockチャートで16位にまで達した。

109.Sugartooth - Sugartooth

Sugartooth - Sugartooth Released1994.4.12
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Alternative Metal, Stoner Rock
ProducerSugartooth
LabelDGC/Geffen
OriginLos Angeles, California, U.S.

後にQueens of the Stone Ageのドラムとなるジョーイ・カステロが在籍していたストーナー色の強いグランジバンドの1stアルバム。Black SabbathやLed Zeppelinなどの70年代ハードロックの流れを汲み、そこに90年代的なうねりとサイケデリックな粘り気を重ねたサウンドを特徴としている。それゆえにSoundgardenの"Louder Than Love"のネバネバとしたサウンドとの共通性も大きく、そこに70年代色の強いストーナーロックをミックスしたような感覚を持っている。どっしりとしたタイプのストーナーが好きな人にも向いているバンドと言えるだろう。

110.Steel Pole Bath Tub - The Miracle of Sound in Motion

Steel Pole Bath Tub - The Miracle of Sound in Motion Released1993.5.10
Type3rd Studio Album
GenreNoise Rock, Grunge, Post-Hardcore
ProducerEric Holland, Steel Pole Bath Tub
LabelBoner Records
OriginBozeman, Montana, U.S.

一時期シアトルで活動していたこともあるノイズロックバンドの3rdアルバム。ドラムのダレン・モリーXは高校時代に後にGreen RiverやMudhoneyを結成するマーク・アームとともにMr. Epp and the Calculationsというバンドで活動していた。ノイズロック系のバンドとしては比較的メロディアスなのも特徴で、そこまでアンダーグラウンドに徹したサウンドでもないため、パンク寄りのグランジとも共通した雰囲気を持ち合わせている。ノイジーなサウンドにグランジにも通じる陰のあるメロディを合わせるスタイルはグランジ好きとしても見逃せない。

111.Sun - XXXX

Sun - XXXX Released1995.2.13
Type4th Studio Album
GenreGrunge
ProducerMichael Grund, Sun
LabelGun Records
OriginMoenchengladbach, Germany

90年代初期から活動する息の長いドイツのグランジバンドの4thアルバム。ドイツのバンドではあるが歌詞は全て英語で書かれている。2ndの"Murdernature"まではジャリジャリとしたメタルとグランジ的なダークネスと実験性を合わせたサウンドだったが、3rdアルバム以降はStone Temple Pilotsの"Core"やAlice in Chainsの"Dirt"にも通じる質感を持った、ジリジリと焼け付くような感覚とひび割れた大地のような荒涼さを感じさせるスタイルへと移行した。本作はその音楽性の完成形とも言え、ヘヴィなサウンドに木管楽器まで絡めた独創的なサウンドを持った"Stolen"を筆頭に質の高い楽曲がそろっている。

112.Nudeswirl - Nudeswirl

Nudeswirl - Nudeswirl Released1993
Type2nd Studio Album
GenreGrunge
ProducerNudeswirl
LabelMegaforce Records
OriginNew Brunswick, New Jersey, U.S.

サイケデリックな粘り気とパンキッシュでラウドな感覚を合わせ持ったグランジバンドの2ndアルバム。Stone Temple Pilotsの"Purple"とThe Smashing Pumpkinsの"Gish"の激しい曲を合わせたうえでサイケな感覚を強めて、ワウを多用したギターサウンドを重ねたような、サイケデリックでありながらも一筋縄ではいかない音楽性を持っている。70年代ハードロックからの影響も見られるがストーナー色は弱く、サイケ感は強いながらも他のサイケ系グランジとはスタイルが大きく異なるなど、様々な音楽性のミックスの仕方に他のバンドにはない強烈な個性を持っている。

113.Brad - Shame

Brad - Shame Released1993.4.27
Type1st Studio Album
GenreAlternative Rock, Neo-Psychedelia, Grunge
ProducerBrad
LabelEpic
OriginSeattle, Washington, U.S.

Pearl Jamのストーン・ゴッサード(G.)とMother Love Boneのアンドリュー・ウッドがかつて在籍していたMalfunkshunのリーガン・ヘイガーらが中心となって結成されたオルタナティブロック系のサイドプロジェクトの1stアルバム。アルバムはほんの20日間でレコーディングされ、それもジャムセッションをそのまま収録したものが多いため、非常にラフで落ち着いた作品となっている。それゆえにグランジ的な攻撃性は強くなく、ちょっとだけダークながらもサイケ色をやや強く持ったピアノを多用した大人向けの感覚を持ったオルタナティブロックに仕上がっている。

114.Big Chief - Face

Big Chief - Face Released1992.5
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Funk Metal
ProducerAl Sutton, Big Chief
LabelSub Pop
OriginAnn Arbor, Michigan, U.S.

Black SabbathやJimi Hendrixなどの60年代後期から70年代にかけてのヘヴィなハードロックを基盤にファンクのグルーヴを取り込んだSub Pop系バンドの1stフルレンスアルバム。2nd以降はファンクへの傾倒がより強まっていくが、このアルバムはサバス的なドロドロとした粘り気の強いヘヴィネスがとりわけ強く、そこにファンクの要素がほどよく絡まることで90年代的な強いうねりを見せている。中でも徹底してヘヴィネスを打ち出した曲ではMelvinsにも匹敵するほどの地を這うような重々しさを堪能させてくれる。

115.Jack Endino - Endino's Earthworm

Jack Endino - Endino's Earthworm Released1992.4
Type2nd Studio Album
GenreGrunge
ProducerJack Endino
LabelCruz
OriginSeattle, Washington, U.S.

Skin Yardのギタリストであり、グランジ系プロデューサーとしても有名なジャック・エンディーノによる2ndソロアルバム。本作では関連の深いシアトル系ミュージシャンをゲストとして多く迎えており、Skin Yardのメンバーをはじめ、Soundgardenのマット・キャメロン、Screaming Treesのバレット・マーティン、Mother Love Boneのグレッグ・ギルモアなどが参加している。いかにも王道のグランジを思わせるサウンドではあるが、そこまで沈み込む感じはなく、Skin Yardほどひねくれてもおらず、シアトルらしいダークネスを宿したややパンキッシュでストレートなグランジとなっている。

116.Flowerhead - ...Ka-Bloom!

Flowerhead - ...Ka-Bloom! Released1992.10.27
Type1st Studio Album
GenreNeo-Psychedelia, Grunge
ProducerFlowerhead
LabelZoo Entertainment
OriginAustin, Texas, U.S.

The Beatlesを代表とする明度の高いサイケデリアと60年代後半の原初的なハードロックを絡み合わせながら、春の日の中でまどろむようなサイケ感を表現していくバンドの1stアルバム。"Snagglepuss"に代表される粘り気を見せながら水面で光が反射してキラキラと輝いているかのようなギターのフレーズはどれも印象的と言えるほど。サイケデリアの質はTripping Daisyとも共通しているが、Tripping Daisyがパンキッシュな疾走感を見せるのに対し、こちらは粘り気とレトロな感覚を重視しているところに大きな個性の違いがある。また、Foo Fightersの"Wattershed"の中にある一節"I wanna listen to the flowerhead"はこのバンドのことを指していると言われている。

117.Hater - Hater

Hater - Hater Released1993.9.21
Type1st Studio Album
GenreAlternative Rock, Grunge
ProducerProducer
LabelA&M
OriginSeattle, Washington, U.S.

Soundgardenのベン・シェパードとマット・キャメロンにMonster Magnetのジョン・マクベインらが加わって結成されたサイドプロジェクトの1stアルバム。そのサウンドはギターのエフェクトまで含めてまさにThe Stoogesの直系といった感じで、60年代の陰りのあるサイケとガレージロックの荒々しさをミックスさせたものとなっており、初期のMudhoneyの静かでダークなタイプの曲とも通じるものがある。他のガレージ色の強いグランジバンドとは違ってパンク色はほとんどなく、ロカビリーぽさも薄いため、60年代の香りをストレートに伝えるという点では突出したものを持っている。

118.Nymphs - Nymphs

Nymphs - Nymphs Released1991
Type1st Studio Album
GenreGrunge
ProducerBill Price
LabelGeffen
OriginHollywood, California, U.S.

女性ヴォーカルを擁するグランジバンドによる唯一のフルレンスアルバム。ダークでノイジーなパンクにポストパンクの持つねじれやゴシック的な雰囲気を重ね、さらにグラムロックにも通じる猥雑さなども合わせたサウンドを鳴らす。ミディアムテンポの曲が大半を占めるあたりも含め、シアトル出身ではないながらもアンダーグラウンド時代のグランジと共通した要素を強く持っている。セールス面ではあまり芳しい結果を残せなかったものの、その楽曲のクオリティは非常に安定している。また"Supersonic"という曲では、The Stoogesなどでの活躍で知られるイギー・ポップがヴォーカルとして参加している。

119.Wool - Box Set

Wool - Box Set Released1994
Type1st Studio Album
GenreGrunge
ProducerRob Schnapf, Tom Rothrock, Wool
LabelLondon Records
OriginLos Angeles, California, U.S.

デイヴ・グロールも在籍していた東海岸のハードコアバンドであるScreamの中心メンバーだった、ピーター・スタールとフランツ・スタールの兄弟を中心に結成されたバンドの1stフルレンスアルバム。パンクの性急さを最大の基盤としながらも、そのヘヴィネスの質はメタリックでもあり、さらにオルタナ的なねじれやグランジにも通じるダーティーなムードも重ねるなど、様々なスタイルを一つに落とし込んでまとめあげたようなサウンドを鳴らす。ピーター・スタールはストーナーメタルバンドのGoatsnakeのヴォーカルとしても知られており、フランツ・スタールは90年代後期にFoo Fightersにも加入していた。

120.10 Minute Warning - 10 Minute Warning

10 Minute Warning - 10 Minute Warning Released1998.5.5
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Punk
ProducerJack Endino
LabelSub Pop
OriginSeattle, Washington, U.S.

シアトルの伝説的なハードコアバンドだったThe Fartzを前身とする、Black Flagがもたらした「遅くてダークなハードコアパンク」を真っ先に取り入れたバンドの唯一のアルバム。Black FlagとGreen Riverを繋ぐ架け橋と言ってもよく、グランジのプロトタイプを作り上げた歴史的なバンドでもある。80年代当時はデモテープしか残すことができず、このアルバムは90年代後半の再結成時に当時の楽曲を中心に改めてレコーディングしてリリースされたものである。それでもシアトルにおけるグランジ誕生前夜の雰囲気をしっかりと感じ取ることができる。また、このバンドにはダフ・マッケイガンがギタリストとして所属しており、解散後にロサンゼルスへと渡って後にGuns N' Rosesのベーシストになったことでも知られている。

121.Greta - No Biting

Greta - No Biting Released1993.9.21
Type1st Studio Album
GenreAlternative Rock, Grunge
ProducerSylvia Massy, John Easdale
LabelStardog/Mercury
OriginLos Angeles, California, U.S.

オルタナバンドらしいひねくれた感覚を中心に据えながらも、ゴリゴリとしたメタリックなヘヴィネスを打ち出したり、そこにグランジらしい陰鬱な雰囲気まで重ねたりと、あらゆる音楽性を強引に詰め込んだかのようなサウンドを鳴らすバンドの1stアルバム。ときにファンクなグルーヴまで見せることもあれば、1つの曲の中でグランジとソフトロックという対極的な音楽性を行ったり来たりすることもあるなど、変幻自在なスタイルを持っている。バンド結成時には後にRage Against the MachineやAudioslaveで活躍するブラッド・ウィルク(Dr.)も在籍していた。

122.Talk Show - Talk Show

Talk Show - Talk Show Released1997.9.2
Type1st Studio Album
GenreNeo-Psychedelia, Alternative Rock, Grunge
ProducerTalk Show
LabelAtlantic
OriginLos Angeles, California, U.S.

Stone Temple Pilotsのスコット・ウェイランド以外のメンバーが"Tiny Music"(邦題:ヴァチカン)のリリース後に元Ten Inch Menのデイヴ・クッツをヴォーカリストに迎えて結成したバンドの唯一のアルバム。"Tiny Music"で見せたThe Beatles的なサイケデリアを基盤にしつつ、そこからスコットの持つ毒気や陰りを抜いたようなサウンドとなっている。またスコットが持ち込んでいたグラムロック的な要素も薄まったため、60年代サイケデリアを持ち込んだ春の温かさを感じるようなちょっとヘヴィなギターロックとなっている。"Tiny Music"が好きな人には比較的オススメしやすい作品。

123.Malfunkshun - Return to Olympus

Malfunkshun - Return to Olympus Released1995.6.18
Type1st Studio Album
GenreProto-Grunge, Grunge
ProducerJack Endino
LabelLoosegroove
OriginBainbridge Island, Washington, U.S.

後にMother Love Boneのヴォーカルを務めるアンドリュー・ウッドが、80年代中盤頃まで兄弟であるケヴィン・ウッドとともに活動していたバンドのアルバム。80年代的なグランジのスタイルとも大きく異なり、アンドリューの持つグラムロック的な雰囲気を基盤にしながらも、その音楽性は非常に混沌としており、メタリックな要素を持ちながらもメタルらしい整合性は持っておらず、ひたすら闇雲に弾き倒しているかのようなリードギターが印象的でもある。また、一部の曲ではMother Love Boneに繋がる要素を垣間見ることもできる。当時はアルバムをリリースしなかったため、後に80年代に残された音源をまとめてPearl Jamのストーン・ゴッサードらが設立したLoosegrooveレコードからリリースされた。

124.Green Apple Quick Step - Wonderful Virus

Green Apple Quick Step - Wonderful Virus Released1993
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Alternative Rock
ProducerDaniel Rey
LabelMedicine/Reprise
OriginSeattle, Washington, U.S.

シアトル出身の後発系グランジバンドの1stアルバム。他のシアトルのインディー系グランジバンドに比べるとメジャーな感覚がやや強いのが特徴で、グランジらしいダークな雰囲気を持ったギターロックやパンク寄りのオルタナサウンドを基盤としながら、そこに様々な形でサイケデリックな浮遊感などを忍ばせていくのを得意としている。2ndアルバムではPearl Jamのストーン・ゴッサードがプロデュースに参加し、よりサイケデリックな色の濃いしっとりとした音楽性への傾倒が強まった。

125.Alcohol Funnycar - Time to Make the Donuts

Alcohol Funnycar - Time to Make the Donuts Released1993.12
Type1st Studio Album
GenreGrunge
ProducerAlcohol Funnycar, Scott Benson
LabelC/Z
OriginSeattle, Washington, U.S.

ストレートな攻撃性とほどよい哀感を帯びたグランジを鳴らすシアトルの後発系グランジバンドの1stアルバム。奇をてらわない王道のグランジサウンドをベースにしながらも、ドロドロとした質感や沈み込むような感覚はあまり強くなく、Dinosaur Jr.などから受け継いだ切ない雰囲気やポストハードコアに通じるチリチリとした切迫感を軽く持ち合わせている。そこそこ攻撃性の強いサウンドながらも、メロディに聴きやすさが備わっているので非常に受け入れやすいタイプのバンドと言えるだろう。

126.Headswim - Flood

Headswim - Flood Released1994.10.24
Type1st Studio Album
GenreGrunge
ProducerDave Eringa
LabelEpic
OriginEssex, England, U.K.

イギリス出身のグランジバンドの1stアルバム。初期のStone Temple Pilotsなどに通じるジリジリと焼け付くような感覚を持ちながらも、ズッシリとした重さではなく直線的な鋭さや攻撃性を強調したサウンドを鳴らす。そのサウンドは焼かれるような熱さを感じさせながらも同時に凍えるような冷たさも持ち合わせているという、相反する感覚を同時に有しているのが大きな特徴と言えよう。アルバムの最初を飾る"Gone to Pot"だけを見てもそうしたスタイルを如実に感じ取ることができる。他にありそうでないグランジサウンドを鳴らすバンドだったが、2ndアルバムではグランジ色が大幅に減退しRadioheadからの影響を強くうかがわせるサウンドへと移行した。

127.Boghandle - Step on It

Boghandle - Step on It Released1992.4
Type2nd Studio Album
GenreGrunge
ProducerJack Endino
LabelKick Music, Rock Owl Records
OriginCopenhagen, Denmark

デンマーク出身のグランジバンドの2ndアルバム。1990年リリースの1stアルバムの時点でグランジ色の強いサウンドを鳴らしているなど、アメリカ以外の出身としては先駆的なバンドの一つと呼んでもいいかもしれない。そのスタイルはインディー系のグランジとしては比較的オーソドックスで、パンキッシュな攻撃性にグランジらしいダラダラとした雰囲気とダークネスを帯びさせながら、そこにポストハードコア的な哀感を軽く流し込んだサウンドを鳴らす。3rdアルバムになるとポストハードコアに近い感覚がいくぶん強まるが、同時にメロディの組み立ての上手さなども向上しているので、そちらも十分にオススメできる。

128.Girl Trouble - New American Shame

Girl Trouble - New American Shame Released1993
Type3rd Studio Album
GenreGarage Rock, Grunge
ProducerTim Olsen
LabelEmpty Records
OriginTacoma, Washington, U.S.

"Sub Pop 200"に参加したことでも知られるガレージロックバンドの3rdアルバム。グランジ風味もチラリと覗かせるものの、基本的にはThe Sonicsのような60年代の原初的でロカビリー色も強いガレージロックを忠実に再現したサウンドを鳴らす。そこにときどきパンクの攻撃性やサイコビリーの感覚が加わりはするものの、同じくガレージ色の強いThe U-Menのようなひねくれた感覚は弱く、まるで60年代のバンドがそのままタイムスリップしてきたかのような感覚を与えてくれる。

129.House of Large Sizes - My Ass-Kicking Life

House of Large Sizes - My Ass-Kicking Life Released1994
Type3rd Studio Album
GenreAlternative Rock, Grunge
ProducerTom Tatman
LabelColumbia
OriginCedar Falls, Iowa, U.S.

90年代オルタナとグランジの要素を上手くミックスしたサウンドを鳴らすバンドの3rdアルバム。彼らが唯一メジャーレーベルからリリースしたアルバムでもある。Pixiesをはじめとしたオルタナ系バンドからの影響を基盤にしながら、ブリブリと響くような低音でダークな質感のギターを重ねることでグランジ的な感触を加えた作風の曲が多い。Pixiesをベースにグランジの要素を加えたという点ではToadiesとも一定の共通性を感じさせる。一方でヴォーカルはオルタナバンドらしいひねくれた感覚を強く持っているなど、90年代のインディー系オルタナバンドとしても十分に楽しむことができる。

130.The Monkeywrench - Clean As a Broke-Dick Dog

The Monkeywrench - Clean As a Broke-Dick Dog Released1992.2
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Garage Punk
ProducerConrad Uno
LabelSup Pop
OriginAustin, Texas, U.S.

Mudhoneyのマーク・アームとスティーブ・ターナーに、The U-MenやGas Hufferで活動するトム・プライスが加わって結成されたサイドプロジェクトの1stアルバム。いかにもMudhoneyらしいサウンドの曲が多くはありながらも、そこに様々な形で60年代のガレージロックの要素を取り入れているのが特徴となっている。ときにサイケ色の強いタイプであったり、あるいはThe Sonicsのような原初的なガレージロックであったり、曲によってその表情は細かく変わっていく。また、トム・プライスがいることもあって、軽くサイコビリーの香りが漂う曲も見ることができる。

131.Jack in the Box - Stigma

Jack in the Box - Stigma Released1995
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Alternative Metal
ProducerJack in the Box
LabelRMG Music Entertainment, Panser Records
OriginOslo, Norway

TNTのギタリストだったロニー・ル・テクロに見出されたノルウェーのオルタナメタル/グランジバンドの1stアルバム。そうした経緯もあって、その音楽性はグランジ寄りのヘヴィなサウンドに傾倒していた当時のTNTとも共通性を感じさせる。そのサウンドはBlack Sabbathの持つ粘り気を引き出し、さらにAlice in Chainsのダークネスと妖しげな浮遊感をミックスしたようなものとなっている。また、曲によっては彼らのもう一つのルーツであるサイケデリックの要素が覗くこともある。メロディがそれほど呪術的な雰囲気を持ってないので、この系統のバンドとしては聴きやすい部類に入ると言えるだろう。

132.Bivouac - Tuber

Bivouac - Tuber Released1993
Type1st Studio Album
GenreGrunge
ProducerPaul Johnson, Graham Naysmith, Bivouac
LabelElemental
OriginDerby, England, U.K.

イギリス出身のグランジバンドの1stアルバム。いかにもグランジ直系のインディーバンドといったサウンドで、そこそこヘヴィながらも重くなり切らないギターに軽く哀感をまぶしたメロディを重ねていく。ヴォーカルにあまりパワーがないので、やや線の細い印象を持たれるところもあるが、シングルとしてもリリースされた"The Bell Foundry"などではそうしたほのかな陰りを感じさせるスタイルが上手くハマっている。より直線的で荒々しい攻撃性を求める場合には、初期の音源を集めたアルバムである"Derby and Joan"がオススメできる。

133.Green Magnet School - Blood Music

Green Magnet School - Blood Music Released1992
Type1st Studio Album
GenreNoise Rock, Grunge
ProducerGreen Magnet School, Tom Hamilton
LabelSub Pop, Genius Records
OriginLowell/Framingham, Massachusetts, U.S.

Sub Pop系のノイズロック/グランジバンドの1stアルバム。1992年のロラパルーザにも出演している。Gang of FourやKilling Jokeなどのポストパンクからの影響を根幹に据えながら、Big Blackにも通じる初期インダストリアル的な無機質な雰囲気を合わせたノイジーで冷たい感覚を備えたサウンドを持っている。80年代のグランジを思わせるダークネスも持ち合わせており、ポストパンク直系のノイズロックをインディーグランジ風に鳴らしているといった形容もできるだろう。

134.Cell - Slo*Blo

Cell - Slo*Blo Released1992.10.19
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Alternative Rock
ProducerCell
LabelDGC
OriginNew York City, New York, U.S.

Sonic Youthのサーストン・ムーアに見出されたグランジバンドの1stアルバム。基盤となっているのは一定のノイジーさと哀感を宿したミディアムテンポ主体のグランジではあるが、サイケデリックな浮遊感をいたるところで感じることができたり、Humなどにも通じるスペーシーな雰囲気を強く持ち合わせているのが特徴となっている。サイケと宇宙的な質感をミックスしたグランジというとPondとも共通するが、そこからドロドロとしたダークネスを引いたようなサウンドと表現することもできるだろう。

135.Silverfish - Organ Fan

Silverfish - Organ Fan Released1992
Type2nd Studio Album
GenreNoise Rock, Grunge
ProducerJ.G. Thirlwell
LabelCreation Records, Chaos Recordings
OriginLondon, England, U.K.

女性ヴォーカルを擁するイギリスのノイズロック/グランジバンドの2ndアルバム。ポストパンクや初期インダストリアルからの影響を強く受け継いだ冷たさを宿したノイジーなサウンドを基盤にしているが、同郷のDaisy Chainsawのような強烈な攻撃的などは持ち合わせていない。ノイズロックでありながらも、むしろL7などにも通じるようなブリブリとしたギターサウンドやヘロヘロとした酩酊感を持ち合わせているあたりにこのバンドの個性がある。解散後にヴォーカルのレスリー・ランキンはシアトルへと移ってRubyというバンドを始め、こちらでの活動歴のほうがすでに長くなっている。

136.Dead Moon - Unknown Passage

Dead Moon - Unknown Passage Released1989
Type2nd Studio Album
GenreGarage Rock, Garage Punk, Grunge
ProducerFred Cole
LabelTombstone Records
OriginPortland, Oregon, U.S.

60年代の伝説的なガレージバンドThe Lollipop Shoppeのヴォーカルだったフレッド・コールが率いるガレージバンドの2ndアルバム。サウンドも60年代をそのまま受け継いでいるかのような、サイケデリックな陰りを持ったストレートな攻撃性を宿したガレージロックとなっている。そうした楽曲群の中で"54/40"という曲だけはやや異色で、このバンドの持つガレージ感を基盤にしながら80年代のインディーグランジを大幅に取り入れたような作風となっている。シアトルシーンを扱ったドキュメンタリーの"Hype!"のサウンドトラックにも同曲が収録されている。

137.Rein Sanction - Broc's Cabin

Rein Sanction - Broc's Cabin Released1991
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Alternative Rock
ProducerKramer
LabelSub Pop
OriginJacksonville, Florida, U.S.

様々な哀感系グランジバンドの要素を一つにまとめて凝縮したかのようなサウンドを鳴らすバンドの1stアルバム。Dinosaur Jr.の胸を締め付けるような感覚、Treepeopleのチリチリとした切迫感と物悲しさ、The Afghan Whigsが紡ぎ出す切なくも深い感情、それらを全て取り入れながらミディアムテンポのサウンドへと煮詰めていき、一定のノイジーさを宿した哀感一色で染められたサウンドを鳴らしていく。胸を焼け付くようなそんなグランジサウンドを求めるなら、これ以上のバンドはなかなか見つけれられないと言っても過言ではないだろう。

138.Das Damen - Jupiter Eye

Das Damen - Jupiter Eye Released1987
Type2nd Studio Album
GenreGrunge, Alternative Rock
ProducerWharton Tiers, Das Damen
LabelSST
OriginNew York City, New York, U.S.

いかにもドイツ語風のバンド名だが、実際にはニューヨーク出身のバンドの2ndアルバム。基本的にはパンク系のサウンドだが、そのダーティーでラフな感覚は80年代後期当時にシアトルで隆盛となっていたインディーグランジとも大きく符合する。シアトル/Sub Pop系からあえて近いバンドを挙げるならThe Fluidあたりだが、このバンドはそこにとどまらずサイケデリックな感覚をチラホラと盛り込んでくるという個性を持っている。80年代後期にシアトル以外で生まれたグランジに触れるという点でも意義の大きいバンドと言えよう。

139.Some Velvet Sidewalk - Shipwreck

Some Velvet Sidewalk - Shipwreck Released1995.1.17
Type4th Studio Album
GenreIndie Rock, Noise Rock, Grunge
ProducerColm Meek, Greg Freeman
LabelK Records
OriginEugene, Oregon, U.S.

60年代のサイケガレージから多大な影響を受けたバンドの1995年のアルバム。もともとは1990年にレコーディングされたもので、2ndアルバムとしてリリースされる予定だった。1stアルバムに比べると強い実験性やローファイ色はいくぶん弱く、The Stoogesなどのサイケガレージを基盤にしたうえでノイジーな感覚を合わせ、インディーグランジの要素を内包させながら、それなりに聴きやすさもあるメロディを重ねることで、一つのガレージ系グランジアルバムとして素直に楽しめる仕上がりとなっている。

140.Jacob's Mouse - No Fish Shop Parking

Jacob's Mouse - No Fish Shop Parking Released1991
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Noise Rock
ProducerHoward, Jacob's Mouse
LabelBlithering Idiot
OriginBury St. Edmunds, England, U.K.

イギリス出身のグランジ/ノイズロックバンドの1stアルバム。サウンドに目をやると、インディー系グランジをベースにそれをノイジーでハードに仕上げたような感じだが、一方でヴォーカルはメロディアスな要素が薄く、ノイズロックからの流れを強く感じさせるものとなっている。そのためノイズロックの視点から見ると、他のバンドに比べてポストパンクに由来するようなジャリジャリとした無機的な感覚が弱くなっている。ノイズロックというよりは、よりハードなインディーグランジを求めるときにオススメできるバンドと言えるだろう。

141.Lucy's Fur Coat - Jaundice

Lucy's Fur Coat - Jaundice Released1994.2.8
Type1st Studio Album
GenreGrunge
ProducerRichard Mouser, Lucy's Fur Coat
LabelRelativity Records
OriginSan Diego, California, U.S.

初期のPearl Jamからの影響を強く感じさせるグランジバンドの1stアルバム。泥臭いサウンドにやや濁った声質のヴォーカルが絡むあたりなどは、Pawなどのバンドと大きな共通性を感じさせられるが、そこからメタル色をやや薄めたうえでストレートなグランジにより近づけ、そこにさらに比較的キャッチーなメロディを重ねることで特徴を出している。アルバムの最初を飾る"Treasure Hands"はまさにそうしたこのバンドの個性が上手く引き出されていると言えるだろう。わかりやすいグランジ感を持ちながらもメロディアスでもあるので、マイナーながらも非常に手を出しやすいバンドと言えるだろう。

142.Best Kissers in the World - Been There

Best Kissers in the World - Been There Released1993
Type1st Studio Album
GenrePop Punk, Power Pop, Grunge
ProducerJohn Hanlon
LabelMCA
OriginSeattle, Washington, U.S.

シアトル出身のポップパンク/グランジバンドが2枚のEPの後にリリースした1stアルバム。少しグランジ風味のあるパンクにパワーポップ的なメロディを盛り込んだサウンドが特徴で、一見するとグランジらしい要素はそれほど強くはない。タイプとしてはFlopが最も近いと言えるが、Flopがグランジ的なサウンドとポップなメロディを意識的にミックスしていたのに対し、こちらはポップパンクの中にグランジらしさがチラホラと覗くような感じになっている。方向性はおおむね同じではあるが、より攻撃的なサウンドを求めるときはSub Popからリリースされたバンドと同名の1stEPに手を出してみるのもいいだろう。

143.Gnome - Fiberglass

Gnome - Fiberglass Released1993.11.18
Type2nd Studio Album
GenreGrunge
ProducerJon Auer
LabelC/Z
OriginSeattle, Washington, U.S.

シアトル出身のインディーグランジバンドの2ndアルバム。サウンドの基盤はいかにもシアトルらしいインディーグランジではあるのだが、メロディにパワーポップ/ポップパンク的な感触が取り込まれているのが大きな個性となっている。このあたりの狙いはアルバムのプロデューサーにThe Posiesのジョン・オウアを起用していることからもうかがうことができる。それでもFlopなどのバンドに比べれば明らかにグランジ色が強いが、グランジと少しフックの効いたポップなメロディが絡む様はなかなか魅力的でもある。

144.Truck Stop Love - How I Spent My Summer Vacation

Truck Stop Love - How I Spent My Summer Vacation Released1995
Type1st Studio Album
GenreAlternative Rock, Grunge
ProducerJeff Powell, Jody Stephens
LabelBackyard Records, Scotti Bros. Records
OriginManhattan, Kansas, U.S.

ニューウェイブからの影響のほのかに香らせるオルタナティブロック/グランジバンドの1stフルレンスアルバム。Pixiesなどを通過したようなひねくれた感覚のあるオルタナティブロックを基盤としながら、そこにグランジらしいザラザラとしたダーティーな感覚を宿したサウンドを鳴らしていく。オルタナポップ的なものからグランジ色が強いサウンドまで、曲ごとにその表情が変わることが多いのも個性となっている。また、ときどきカントリー色が強い曲が登場するのもこのバンドの大きな特徴と言えよう。

145.Bundle of Hiss - Sessions: 1986-1988

Bundle of Hiss - Sessions: 1986-1988 Released2000.7.4
TypeCompilation Album
GenreGrunge
ProducerJack Endino
LabelLoveless Records
OriginSeattle, Washington, U.S.

80年代初期から活動していた黎明期のグランジシーンを作り上げたバンドの一つ。彼らが80年代に残した音源をまとめてリリースした唯一の作品。Tadのカート・ダニエルソンとMudhoneyのダン・ピーターズを中心メンバーとし、最後期にはタッド・ドイルもメンバーであったことから、Tadの最も重要な前身バンドと言ってもいい存在。Black Sabbathをはじめとした70年代ハードロックを軸としながら、FlipperやSwansなどのノイジーなポストパンクの影響も重ね、ズルズルと引きずるようなヘヴィネスを見せ付ける。極めてマイナーな作品だが、80年代のグランジシーンを知るうえでは非常に重要で、MelvinsやTadが好きな人はぜひとも入手しておきたいところ。

146.Smile - Maquee

Smile - Maquee Released1994
Type1st Studio Album
GenreGrunge
ProducerEric Garten, Geoff Harrington
LabelAtlantic, Headhunter
OriginOrange County, California, U.S.

Nirvanaの持つ切迫感にKyussのブリブリとしたサウンドアプローチをミックスしたようなグランジバンドの1stアルバム。チリチリとした攻撃的なグランジにKyuss的なストーナーロックを通過させたようなそのサウンドはグランジ好きならおおむね気に入ると言えるものとなっている。一方でミュージックビデオも作られた"Staring at the Sun"ではドロドロとした粘り気の強いサウンドを見せるなど、ヘヴィサイケ色の強いグランジもまた得意としている。2ndアルバムではグランジ色が希薄になり、パンク色の強いポップ感のあるオルタナティブロックへと移行した。

147.700 Miles - 700 Miles

700 Miles - 700 Miles Released1993
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Alternative Rock
Producer700 Miles, Louis Scalise
LabelRCA
OriginDetroit, Michigan, U.S.

Pearl Jamの"Oceans"や"Release"といった陰りがありながらも大らかさを持ち合わせた初期の静かな曲やNeil Youngをベースに、グランジ的なアプローチを重ねたようなサウンドを鳴らすバンドの1stアルバム。大らかで広がりを持った雰囲気を持ちながらも、そこにグランジ的なラウドなギターが絡むことでねじれた切迫感なども同時に宿したサウンドを作り上げる。他のグランジバンドにはありそうでないサウンドで、ハードロック色もパンク色もそれほど強くなく、ルーツロックのグランジ的解釈といった雰囲気を少なからず感じさせる。

148.Sprinkler - More Boy, Less Friend

Sprinkler - More Boy, Less Friend Released1992.10
Type1st Studio Album
GenreGrunge
ProducerDoug Colson
LabelSub Pop
OriginPortland, Oregon, U.S.

90年代におけるインディーグランジの見本とも呼びうるようなサウンドを鳴らすSub Pop系グランジバンドの1stアルバム。Pondなどと共通するようなチリチリとした不気味な哀感を持ち合わせつつも、彼らの持っていたサイケなムードなどを漂わせることはなく、それをいかにもインディーグランジ的なサウンドに落とし込んでいるのが特徴と言える。グランジらしいダークネスと不気味な感覚、インディーロック的な哀感、ラフなサウンドアプローチなど、グランジムーブメント以降のインディー系グランジが持ち合わせていた要素を全てまとめあげたようなサウンドと形容することができよう。

149.Surgery - Nationwide

Surgery - Nationwide Released1990
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Noise Rock
ProducerSurgery, Wharton Tiers
LabelAmphetamine Reptile
OriginHartford, Connecticut, U.S.

パンク寄りのグランジにノイズロック的なサウンドアプローチを合わせたようなバンドの1stアルバム。ノイズロックに近いとは言ってもポストパンクやインダストリアル的な無機的な感覚は極めて希薄である。むしろ80年代のノイジーなパンク系グランジを基盤としながら、それをジャリジャリとしたアプローチで鳴らしていると言ったほうが近い。Mudhoneyにも通じるヘロヘロとした感覚も少し宿しており、グランジ側からMudhoneyやThe Fluidを、ノイズロック側からSteel Pole Bath Tubをミックスしたようなサウンドと言えなくもない。そのためノイズロック好きよりはパンク寄りのグランジが好きな人にオススメしやすい。

150.Send No Flowers - Juice

Send No Flowers - Juice Released1996
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Post-Grunge
ProducerPaul Johnston, Sank, Send No Flowers
LabelEastWest
OriginBristol, England, U.K.

イギリス出身のグランジバンドが出した唯一のアルバム。Alice in Chainsの"Dirt"を思わせる荒れ果てた大地のような質感、Stone Temple Pilotsの"Core"のようなジリジリと焼け付く感触、そしてNirvanaの持つ切迫感など、グランジらしさを凝縮させたような攻撃的なサウンドを鳴らす。同じくイギリス出身であるHeadswimとタイプ的に近いが、こちらのほうがより王道のグランジに近いと言える。シングルとしてもリリースされた"Downfall"など完成度の高い曲も多く、国内盤もリリースされていることから入手もしやすいなど、マイナーながらもオススメしやすいバンドである。

151.Thread - Everyday Grace

Thread - Everyday Grace Released1994
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Alternative Metal
ProducerThread
LabelBitter Music, BSR Records
OriginSeattle, Washington, U.S.

シアトル出身のマイナーなグランジバンドの1stアルバム。彼らの楽曲がAlice in Chainsの未発表デモ曲と間違えられることがたびたびあり、それがきっかけで一部で注目を浴びるなどした。その音楽性は間違いなくAICからの流れを汲んでおり、不気味なムードを持ったハーモニーなどは明らかにその影響を伺わせるが、AICと比べてアコースティック寄りのアプローチを取る曲が多く、ゴシック色が強いといった個性も持ち合わせている。2ndアルバムでは本作の音楽性を継承しながら、よりゴシック的な感覚を強めた作風となっている。

152.Blood Circus - Primal Rock Therapy (Sub Pop Recordings: '88-'89)

Blood Circus - Primal Rock Therapy (Sub Pop Recordings: '88-'89) Released1992.11
TypeCompilation Album
GenreGrunge
ProducerJack Endino
LabelSub Pop
OriginSeattle, Washington, U.S.

"Sub Pop 200"に参加したことでも知られている、NirvanaやTadらと同様に80年代後期のシアトルのグランジシーンを支えたバンドが残した唯一のアルバム。もともとは1989年に5曲入りのEPとしてリリースされたものに、シングル2曲と未発表曲5曲を新たに加えて再リリースされた。いかにも80年代らしいBlack Flagの流れを汲んだダークでラフな感触を持ったパンキッシュなサウンドを基盤としながら、そこにガレージロックの要素を加えたThe Fluidなどと共通するスタイルを持っている。80年代のグランジが好きであればおおむね気に入る可能性の高い作品と言えるだろう。

153.Pitchfork - Eucalyptus

Pitchfork - Eucalyptus Released1990
Type1st Studio Album
GenrePost-Hardcore, Grunge
ProducerJohn Reis
LabelNemesis Records, Swami Records
OriginSan Diego, California, U.S.

サンディエゴのポストハードコアシーンを代表するDrive Like Jehuの前身バンドが残した唯一のアルバム。Rocket from the Cryptのフロントマンであるジョン・レイスがいたことでも知られている。流れとしては間違いなくポストハードコアシーンのバンドではあるのだが、Fugaziのようなチリチリとした切迫感を強く宿したサウンドとは少々違い、Mudhoneyなどにも通じる強烈なヘロヘロ感を持っているのが大きな特徴となっている。それゆえにグランジ好きとしても十分すぎるほどに手にする価値のある作品と言えよう。2003年に再リリースされたバージョンでは、1stEPの"Saturn Outhouse"の楽曲も全て収録されている。

154.Solomon Grundy - Solomon Grundy

Solomon Grundy - Solomon Grundy Released1990
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Alternative Rock, Psychedelic Rock
ProducerJack Endino, Solomon Grundy
LabelNew Alliance Records
OriginEllensburg, Washington, U.S.

Screaming Treesのベーシストであるヴァン・コナーによるサイドプロジェクトが残した唯一のアルバム。インディー時代のScreaming Treesと同じくパンクとサイケデリックロックをミックスしたスタイルとなっており、彼らの2ndアルバムである"Even If and Especially When"に比較的近い、サイケデリックな酩酊感よりもパンキッシュな躍動感に比重を置いたサウンドとなっている。マーク・ラネガンの渋みのあるヴォーカルがないためにやや薄味に感じられるが、初期のScreaming Treesが好きな人であれば手にしておいて損はないだろう。

155.April's Motel Room - Black 14

April's Motel Room - Black 14 Released1994
Type1st Studio Album
GenreAlternative Rock, Grunge, Neo-Psychedelia
ProducerMatt Hyde
LabelEpic
OriginSimi Valley, California, U.S.

グランジ的な陰りとサイケデリックなムードをミックスしたサウンドを鳴らすバンドの唯一のアルバム。アルバムの最初の飾る"God"のような大らかなサイケデリアを感じさせる曲もあれば、続く"California"のようにいかにもなグランジサウンドを鳴らすこともある。そこに彼らの大きな特徴となっている複雑なパーカッションが絡むことで、グランジ的でありながらも多国籍感を同時に感じさせるのが非常に面白い。使用する楽器も多彩で、まるで60年代のサイケ全盛期の時代のバンドが持っていた実験性を90年代のグランジシーンに持ち込んだようなバンドと呼べるかもしれない。

156.Stick - Heavy Bag

Stick - Heavy Bag Released1993
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Alternative Metal
ProducerStick
LabelArista
OriginLawrence, Kansas, U.S.

Alice in Chainsからの流れを汲んだダークでグルーヴィーなグランジ/オルタナメタルを鳴らすバンドの1stアルバム。ベーシストが黒人のメンバーということもあり、ブラックミュージック的なグルーヴがエッセンスとして加えられており、ヴォーカルについてもファンクぽさをチラリと覗かせることがある。音楽の大きな方向性としてはJack in the Boxあたりと近いのだが、AIC的な浮遊感はやや希薄で、地に足をついたグルーヴィーな感覚が強いあたりに、他のヘヴィロックバンドとは違った個性を見出すことができる。

157.Swallow - Sourpass

Swallow - Sourpass Released1989
Type2nd Studio Album
GenreGrunge
ProducerJack Endino, Swallow
LabelSub Pop
OriginSeattle, Washington, U.S.

"Sub Pop 200"にも参加した、Blood CircusやTadと同様に80年代のシアトルのグランジシーンを支えたバンドの2ndアルバム。困ったことにamazonなどでは扱われておらず、1stアルバムと同様に入手はかなり困難である。そのスタイルは80年代のインディーグランジに非常に忠実で、Black Flagが打ち出した遅いハードコアを基盤にしながら、そこに自分達なりのラフな感覚などを加えている。初期のMudhoneyと比較的音楽性が近く、Mudhoneyからひねくれた感覚を一定程度ひき算したようなサウンドと言える。他の80年代のバンドと比べると60年代ガレージ色がやや薄いのも特徴。

158.Cat Butt - Journey to the Center of Cat Butt

Cat Butt - Journey to the Center of Cat Butt Released1989.8
Type1st EP
GenreGrunge, Garage Punk
ProducerJack Endino
LabelSub Pop
OriginSeattle, Washington, U.S.

"Sub Pop 200"に参加したことでも知られるシアトルのインディーグランジバンドが唯一残したEP。最初期にThe U-Menのメンバーが2人関わっていたこともあり、80年代グランジらしいBlack Flagの流れを汲んだダークでラフなパンクサウンドに、ガレージロックやサイコビリーの要素が等価な比重で絡むようなサウンドを鳴らす。それでもThe U-Menに比べれば遥かに素直なグランジサウンドでそれなりに聴きやすい内容となっている。アルバムタイトルはThe Amboy Dukesの"Journey to the Center of the Mind"のパロディとしてつけられたもの。

159.Nero's Rome - Togetherly

Nero's Rome - Togetherly Released1995.10.10
Type3rd Studio Album
GenreGrunge
ProducerNeros Rome, Thee Slayer Hippy
LabelHorsehead Meguire Records
OriginPortland, Oregon, U.S.

サイケデリックな浮遊感を強く持ったヘヴィなグランジサウンドを鳴らすバンドの1stアルバム。Alice in Chainsの"Dirt"やStone Temple Pilotsの"Core"に代表されるような強い酩酊感を持ったヘヴィグランジを基盤としつつ、それらの音楽の持つ浮遊感やサイケデリックな要素を拡大したようなサウンドを構築した。そうすることで表面的にはヘヴィでありながらも、沈み込むのではなく聴くほどにふわふわと浮かぶような浮遊感と酩酊感に満たされる、そんな90年代型のヘヴィなサイケデリックサウンドを作り上げている。

160.Fire Ants - Stripped

Fire Ants - Stripped Released1993
Type1st EP
GenreGrunge
ProducerJack Endino
LabelDekema Records
OriginSeattle, Washington, U.S.

Nirvanaの"Bleach"期のドラマーだったチャド・チャニングとMother Love Boneのフロントマンだったアンドリュー・ウッドの兄弟である、ブライアン・ウッドとケヴィン・ウッドらによって結成されたバンドが唯一残した作品。いかにも90年代のインディーグランジらしい感触を持っていながら、それ以上にRed Hot Chili Peppersなどからの影響を感じさせるファンク色の強いサウンドが印象に残る。ファンキーなサウンドにアンドリューの兄弟のヴォーカルが絡むことで、Mother Love Boneに通じる雰囲気を少し感じることもできる。

161.Willard - Steel Mill

Willard - Steel Mill Released1992.7.21
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Sludge Metal
ProducerJack Endino
LabelRoadrunner
OriginSeattle, Washington, U.S.

Tadのオリジナルドラマーだったスティーヴ・ウィードらによって結成された極めてヘヴィなサウンドを鳴らすバンドの1stフルレンスアルバム。本作のレコーディングにはTadのタッド・ドイルも参加している。Melvinsを思わせるようなズルズルと引きずるようなヘヴィネスに唸るようなヴォーカルが絡み、さらにTadの持つ斧で切り刻むかのようなゴリゴリとしたグルーヴがミックスされたサウンドを鳴らす。グランジと呼ばれるバンドの中でも突出してヘヴィなサウンドを鳴らす存在で、スラッジにも近いと言っていいだろう。マイナーな存在ではあるが、Melvinsなどの地を這うようなヘヴィネスが好きな人なら十分にオススメできるだろう。

162.Unearth - Everything Was Beautiful and Nothing Hurt

Unearth - Everything Was Beautiful and Nothing Hurt Released1993.7.22
Type1st Studio Album
GenreGrunge, Alternative Metal, Sludge Metal
ProducerJack Endino, Unearth
LabelNew Rage Records
OriginSeattle, Washington, U.S.

シアトル出身のズルズルと地を這うようなヘヴィネスを打ち出すバンドの唯一のアルバム。決してヘヴィネス一辺倒というわけでもなく、Sprinklerあたりを連想させるような90年代的なインディーグランジらしい要素が顔を出すこともあるが、あくまで基盤となっているのはSwansやMelvinsのようなスラッジにも通じる引きずるような重々しさとBlack Sabbath的な質感がミックスされたサウンドとなっている。それでもスラッジに比べるといくぶんは聴きやすさもあり、Melvinsにインディーグランジ的なエッセンスを少し取り入れたようなサウンドとも言えるだろう。

163.Spell - Mississippi

Spell - Mississippi Released1994.10.4
Type1st Studio Album
GenreAlternative Rock, Grunge
ProducerSpell
LabelIsland Records
OriginDenver, Colorado, U.S.

The Fluidのドラムだったガレット・シャヴリックを中心に結成されたバンドの唯一のアルバム。アルバムのタイトルは「Mississippiのスペルがややこしい」ということからつけられたパロディ的なものだと思われる。The Fluid時代を思わせるようなガレージパンク的サウンドを基盤にした砂埃の香りがするような野太いサウンドを鳴らすこともあれば、女性ヴォーカルがメインとなる曲では中期頃のThe Cureを思わせるような要素が強く見られるなど、Eve's Plumあたりとも共通するようなニューウェイブとグランジが同居した不思議なスタイルを見せる。

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